研究概要 |
近年、“Interkingdom signaling(IKS)” の存在が発見され、研究者の注目を集めている。IKSとは、本来は細菌間の情報伝達に使われていた物質が、「界」を越えてその宿主へ作用し、逆に宿主由来の物質が細菌へ作用しその性質を変化させるという細菌界と動物 界との双方向的な情報伝達を指す概念である。代表的ストレス関連ホルモンであるカテコラミンは、その情報伝達を仲介する分子の一つと考えられており、カテコラミンを介したIKSは、腸管内で恒常的に行われていると推定されているが、これまでin vivoで明確に証 明した報告はなかった。 本研究によって、1.腸管管腔内にはカテコラミンが存在しており、2.その生成には腸内細菌由来のbeta-glucuronidaseによる脱包合が関与している、ことを明らかにした。具体的には、beta-glucuronidase活性を持つ大腸菌とbeta-glucuronidase活性を欠損した大腸菌変異株のそれぞれ単一細菌から構成された人工菌叢マウスを作成し、その腸管内でのカテコラミン濃度を比較した。その結果、beta-glucuronidase活性を欠損した大腸菌変異株では無菌マウスと同様に遊離型カテコラミン濃度が著しく低値であり、大半のカテコラミンは生理活性を有しない包合型として存在していた。また腸管ループを用いたモデルによって腸管管腔内カテコラミンは水分吸収の調整に関与していることが明らかとなった。 以上の結果をAm J Physiol Gastrointest Liver Physiol誌に報告したが、F1000に注目論文として取りあげられるなど(In F1000Prime, 01 Feb 2013; DOI: 10.3410/f.717972997.793469811)海外研究者からの注目も高い。
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