研究課題/領域番号 |
24659351
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
下川 功 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70187475)
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研究分担者 |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40284674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 代謝疾患 / カロリー制限 |
研究概要 |
本研究計画では、実験的(カロリー制限マウス血漿に存在する循環型 miRNA (circulating miRNA: c-miRNAs)網羅的解析)及び疫学的(長崎県離島地域における動脈硬化と遺伝子多型解析)アプローチによって得られた解析結果を統合し、c-miRNA を指標とした加齢・加齢性疾患・生活習慣病のバイオマーカーの探索を目的とする。 miRNAは、細胞核内で既存遺伝子と同様に転写され、核外へ移行する。その後、細胞質内で様々な修飾を受けて最終的に Argonaute2(Ago2)蛋白質と複合体を形成して、標的mRNA への結合を介して蛋白質翻訳制御に関与する。近年、血液中において循環型 c-miRNAs の存在が認められ、様々な病態に関与していることが示されていた。従って、加齢や生活習慣病においても何らかの役割を担っていると考えられているが、分子メカニズムは未だ明らかにされていない。 そこで本研究では、まず初めに、長崎県五島市・雲仙市の住民健診受診者を対象とした疫学調査で集積された約3300の血漿、疫学データを利用して、ヒト血漿サンプルの分類を行った。具体的には、年齢、性別、動脈硬化指数、BMI、血圧、中性脂肪、コレステロール等の血液生化学、喫煙、飲酒習慣などの基本データを用いた分類である。次に、動脈硬化疾患保有者、動脈硬化指数高度群、高中性脂肪群、高コレステロール群等、各群30 名程度を抽出し、それら血漿サンプルを調整した。そして、抗 ヒト Ago2 抗体を用いた免疫沈降法を用いて、調整された血漿サンプルに含まれる c-miRNA を精製した。最後に、定量 PCR 用サンプルを作製した。 来年度は、マウスを用いた実験的アプローチによって得られた結果を基に、老化・生活習慣病関連 c-miRNA を抽出して、ヒトにおける発現様態を詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年、まず初めに、長崎県五島市・雲仙市の住民健診受診者を対象とした疫学調査で集積された約3300の血漿、疫学データを利用して、ヒト血漿サンプルの分類を行った。具体的には、年齢、性別、動脈硬化指数、BMI、血圧、中性脂肪、コレステロール等の血液生化学、喫煙、飲酒習慣などの基本データを用いた分類である。次に、動脈硬化疾患保有者、動脈硬化指数高度群、高中性脂肪群、高コレステロール群等、各群30 名程度を抽出し、それら血漿サンプルを調整した。そして、抗 ヒト Ago2 抗体を用いた免疫沈降法を用いて、調整された血漿サンプルに含まれる c-miRNA を精製した。最後に、定量 PCR 用サンプルを作製した。次年度、候補となるmiRNAの定量を行う予定であり、研究計画に従い進行している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、凍結保存された血漿からヒトAgo2抗体を用いた免疫沈降法を応用してmiRNAを高純度に含むRNA画分を調製した。今後、SYBR Green法(Exiqon)、TaqMan Probe法を用いて定量的qPCRを行いmiRNA発現レベルを定量する。miRNA測定は、一般的なmRNAのqPCRと比べ、技術的に不安定な場合があるが、我々の研究室では、独自にqPCR法を用いたmiRNA発現定量実験系を確立し、経験も豊富である。 また、マウスで同定されたカロリー制限(CR)によって特異的に変動する36種類のmiRNAに焦点を絞ることによって、代謝疾患に特異的に変化するmiRNAを同定できる可能性が高い。有意に変動するCR関連miRNAを同定できた場合、解析対象数をさらに拡大し、メタボリック症候群の各種検査所見との関連性を統計学的に解析する。これらの所見と有意な相関を示すmiRNAは、新規メタボリック、老化マーカーへの応用が期待されるため、知的財産本部と協議のうえ、特許申請、技術移転を行う。 一方、CR関連miRNAの機能解析を行う。まず、CR関連miRNAの標的mRNAを同定する。引き続き、miRNA分泌細胞、臓器と標的細胞の同定、バイオインフォマティクスによる新規miRNA候補の同定などを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の全額は、miRNAの定量、タンパク質やmRNAの定量のための試薬に使用される。
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