研究課題/領域番号 |
24659352
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
松村 晃寛 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20464498)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβ / トランスジェニック / ミクログリア |
研究実績の概要 |
本研究はアルツハイマー病の複数モデルの動物を用いた動物実験により(1)神経変性時の生体反応としてのミクログリアを中心とした神経免疫システムの経時的推移を解析し、その神経保護作用の解明を試み、続いて(2)薬理学的治療や再生治療などの治療介入による神経免疫システムの変化を解析し、より有効かつ画期的な治療法を模索する。また可能であれば(3)神経免疫システムの障害と神経変性疾患の病態の関連を考察し、病態の解明も試みることを目的として開始した。 昨年度はアルツハイマー病(AD)トランスジェニックマウス(APdE9マウス)の脳組織学的解析により、脳内にアミロイドβ(Aβ)が沈着し始める生後6ヶ月およびやや増加する生後9ヶ月においてはミクログリアの貪食マーカーであるCD68が陰性もしくは弱陽性の活性型ミクログリアが優位で、Aβ沈着部の他、Aβ非沈着部にも集積し内部に微小なAβを取り込んでいる像を確認した。またこの時期にはミクログリアにおけるα7型ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)の発現が増強していた。一方、Aβ沈着が著増する生後12ヶ月以降ではCD68陽性の活性型ミクログリアがAβ沈着部に集積していた。またミクログリアにおけるα7nAChR発現は経時的に減少していた。 このことから、APdE9マウスのAD様病理変化においては病初期にはミクログリアのα7nAChR発現が増強し、CD68陰性ないし弱陽性の活性型ミクログリアが誘導されて可溶性の微小Aβオリゴマーのクリアランスに関与し、進行期になってAβ沈着が著増するとミクログリアのα7nAChR発現は減少し、線維型Aβのクリアランスに関与している可能性が推察された。ADモデル動物脳における新規知見であったことからこの結果を論文化してJournal of Alzheimer's Disease誌に投稿し2015年44巻2号に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度も行動記憶評価法としてモーリス水迷路やY迷路の評価法確立を試みたが健常マウスと未治療APdE9マウスの間で認知機能の差が得られず、治療介入の効果を判定する評価法として確立することができなかった。 そのため、研究計画における「4.治療介入した各アルツハイマー病モデル動物における脳組織学的評価」「5.各アルツハイマー病モデル動物に対するミクログリア抑制的アプローチの試み」「6.健常マウスに対するミクログリア制御によるアルツハイマー病再現の試み」「7.各アルツハイマー病モデル動物に対するミクログリア制御治療と再生治療の併用介入」の実験を進められず、進捗状況は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアルツハイマー病モデルマウスに対して引き続きモーリス水迷路などによる行動記憶評価法の確立を試みる。またGTS-21などのα7nAChRアゴニストによる治療介入を試み、脳組織学的評価、生化学的評価にて治療効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き当該年度も行動記憶評価としてモーリス水迷路試験や、新たな方法としてY字迷路試験を試みたが、未だ健常マウスと未治療APdE9マウスの間での認知機能の差が得られず、治療介入の効果を判定する基準としての行動記憶評価方法を確立させることができなかった。そのため次の段階の治療介入による研究計画以降の実験を進められず、これらに必要な試薬類を購入できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
ニコチンやα7nAChRアゴニストであるGTS-21、α7nAChRに対しAPL作用を有するガランタミン、その他新規のα7nAChRアゴニストなどの治療介入試薬や組織学的評価用の試薬、酸化ストレス評価用の試薬や機材使用費、学会発表用の学会参加費や旅費、論文投稿費用などに使用する計画である。
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