漢方医学における診断・予後判定のために必要な基礎的情報である漢方医学的所見は、未だ科学的に解明されていない。本研究は漢方医学的所見にどのような診断的意義があるのか、また予後判定機能があるのかを検証するための本邦初の前向きコホート研究である。 平成20年に、2つのコミュニティの高齢者を対象に、対象者の基本情報と、現代医学的疾病の情報、漢方医学的所見の情報を収集し、漢方医学的所見と現代医学的疾病についての関連性を検討する横断研究を実施した。 前向きコホート研究に関しては、567名の対象者の健康状態を調査し、平成21年~23年までに、202名において①生存②新規疾病罹患③既存疾病症状変化④その他に関する情報の変化を確認した。本年度は、前年に引き続き、567名の対象者の健康状態を調査し、523名において①生存②新規疾病罹患③既存疾病症状変化④その他に関する情報の変化を確認した。近隣医療機関に入院・転院した対象者は、昨年度は61名であったが、本年度は49名であった。49名については、各医療機関に情報提供を依頼して追跡している。各医療機関の協力が得られ、現在、90%以上の高い追跡率を維持している。なお、前向きコホート研究の研究期間は、平成20年から平成30年までの10年間を目途としている。 本研究により特定の漢方医学的所見に、診断価値、予後判定機能が見いだされれば、漢方医学の診断ガイドライン作成に道が開け、漢方医学的介入による疾病予防にもつながる可能性がある。
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