研究課題
増殖分化に関与する転写抑制因子であるId2を欠失させたId2ノックアウトマウスは、インスリン感受性が亢進し耐糖能が高いことより、Id2の機能喪失に抗肥満作用があるか検討するため、肥満マウスKKAyの背景でId2ノックアウトマウス(KKAy-Id2KOマウス)を作製した。KKAyと比較し有意に体重増加が少なく、血糖の上昇も認めなかった。KKAy-Id2 KOマウスのインスリン値は0.56 ng/mlでKKAyマウスの3.0 ng/mlに比べ有意に低値であった。インスリン負荷試験ではKKAyマウスで見られたインスリン抵抗性が改善した。KKAy-Id2 KOマウスはKKAyに比べ肝細胞の脂肪沈着が少なく、褐色脂肪組織の白色脂肪化は認めなかった。インスリン刺激によるId2の発現量の増加はLY294002処理で抑制されることより、Id2の発現は一部PI3キナーゼ経路によって調節されると考えられた。また、3T3細胞にFLAG-Id2とMyc-PPARγを共発現させ、細胞溶解物を抗FLAGアフィニティゲルで免疫沈降すると抗Myc抗体によるWestern blotでバンドが検出されることより、Id2とPPARγが相互作用することが示唆された。Id2の機能喪失がインスリン感受性を高め、脂肪肝の改善をもたらすことは、脂肪肝の背景にあるメタボリックシンドローム、さらには生活習慣病に対する新規の治療薬開発につながるものと考えられた。
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Molecular and Clinical Oncology
巻: 2 ページ: 1028-1034
10.3892/mco.2014.371