研究課題/領域番号 |
24659361
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清島 満 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10171315)
|
研究分担者 |
伊藤 弘康 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80373075)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 肝炎ウイルス / インドールアミン酸素添加酵素 / 細胞障害性T細胞 |
研究概要 |
1)IDOノックアウト(KO)マウスを用いたHBV特異的CTL誘導能の解析 通常のWTマウスおよびIDOKOマウスを用い、HBV抗原単独およびHBV抗原とアジュバンドとしてα-ガラクトシルセラミドを同時に投与することにより免疫を行い、CTLの誘導能および誘導能修飾機構を検討した。IDOKOマウスにおいてHBV抗原+α-ガラクトシルセラミドの免疫により、HBs抗原特異的CD8陽性細胞の数が増加した。また、ELISPOTアッセイによる抗原特異的IFN-g産生細胞の検出においてもIDOKOマウスへHBV抗原+α-ガラクトシルセラミドを免疫することによりIFN-g産生細胞の増加がみられた。すなわち、HBV抗原+α-ガラクトシルセラミドによる免疫はIDOの発現を欠損させることにより、よりHBs抗原特異的な免疫応答を誘導できると示唆された。 2)HBVTg/IDOKOマウスを用いた急性肝障害の解析 WTおよびIDOKOのHBVTgマウスにHBV抗原特異的CTLを移入し、肝障害を誘導し、IDOの急性肝障害時における働きを検討した。HBVTg/IDOKOマウスにCTLを移入し血清ALT値を測定したところ、HBVTg/WTマウスに比べ、ALTは低値であった。また、組織学的な検討においてもHBVTg/IDOKOマウスでは、肝障害誘導後の炎症細胞浸潤は軽度であった。リアルタイムPCRによる肝内でのmRNAの発現を検討したところ、HBVTg/IDOKOマウスにて炎症性サイトカインの発現はHBVTg/ WTマウスに比し軽微であった。以上より、本急性肝障害モデルにおいてIDOの欠損は、肝障害の程度を軽減させるものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りHBV特異的CTL誘導能およびCTLにより惹起される急性肝障害モデルにおいてそれぞれIDOノックアウトマウスを使用した検討ができた。さらに、それぞれの検討においてIDOの働きを明確にできたことは大きな成果だと考えられる。現在、IDOがそれぞれの病態への修飾にどのようなメカニズムで影響を及ぼすのか解析を進めているが、現段階では不十分であり、本年度、明らかにする予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
IDO阻害薬およびIDO発現ベクターを用いたCTL誘導能と肝障害に対する効果の検証 IDOKOマウスにて解析を行った結果を十分に参考にしてWTマウスでのHBV特異的CTL誘導能および肝障害の病態に対するIDO阻害薬およびIDO発現ベクターの影響を解析する。IDOの拮抗阻害剤である1-メチルトリプトファン(1MT)を経口投与してCTL誘導能実験およびCTL移入による肝障害誘導実験を行い、1-MTのCTL誘導能(抗原特異的細胞障害性試験など)および肝障害に対する効果を検証する。また、申請者らがすでに保有しているIDO遺伝子を組み込んだベクターを用い、IDOを生体内で強発現させた後、CTL誘導能実験およびCTL移入による肝障害誘導実験を行い、IDO発現ベクターのCTL誘導能および肝障害に対する効果を検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、予想以上に実験がスムーズに進行でき、予備実験などの回数も減らすことができた。このため、マウス購入・維持費および各実験試薬などの購入費が抑えられ、繰越金が生じたと考えられる。しかしながら、実験結果の十分な検証は行われておらず、今後行う必要がある。 次年度の研究費に関しては、主にマウス購入および維持に使用。また、免疫学的検討に用いる各種抗体なども随時購入する。本年度は、最終年度であるため、学会での発表や医学雑誌への論文発表に必要な経費を使用する。
|