研究課題/領域番号 |
24659365
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻井 正彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40303937)
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研究分担者 |
西田 勉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20467575)
竹原 徹郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70335355)
飯島 英樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90444520)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 胃癌 / ヘリコバクターピロリ / 炎症 |
研究概要 |
ヘリコバクターピロリCagAトランスジェニックマウスの胃粘膜の検討を行った。 粘膜細胞動態をBrdUの取り込み率で検討した。CagAトランスジェニックマウスでは、野生型マウスに比べ、粘膜細胞動態は亢進していた。その原因を明らかにする目的で、細胞増殖に関わるシグナル伝達機構(ERK、PI3/Akt)について検討した。CagAトランスジェニックマウスの胃粘膜では、ERKの活性化が認められた。このようなERKの活性化を介する粘膜細胞増殖動態の持続的な亢進が胃発癌亢進に関わる可能性が考えられた。 ヘリコバクターピロリ関連胃発癌では、胃粘膜の炎症がメチル化異常を引き起こしエピジェネティックな経路を介して発癌に関わる可能性、腸上皮化生性変化が重要な役割を果たしている可能性が考えられている。そこで本検討で作成したCagAトランスジェニックマウスの胃粘膜の組織学的検討を行った。CagAトランスジェニックマウスの胃粘膜では、全く炎症性変化は認められず、また、80週齢を超えても、胃粘膜に、杯細胞出現などの腸上皮化生性変化は認められなかった。 以上のことから、これまでは、ヘリコバクターピロリ感染胃粘膜では、炎症細胞浸潤などの炎症性変化が生じ、それが酸化ストレスやメチル化などを介して、胃発癌に関わると考えられていたが、CagAトランスジェニックマウスでは、胃粘膜に炎症性変化や腸上皮化生性変化を惹起させることなく、粘膜の細胞増殖動態を亢進させ、これが胃発癌に関わる可能性が示唆された。本検討結果から、ヘリコバクターピロリによる胃発癌に関して、新たな経路が明らかとなり、今後の新たな胃癌予防・治療法の開発につながる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘリコバクターピロリ関連胃発癌に関して、新たな発癌経路の可能性を示唆する実験結果が得られ、現在までのところ、おおむね順調に研究は進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、萎縮性胃炎がヘリコバクターピロリの除菌適応に認められたが、これまでの検討結果からは、より早期での治療予防介入が必要になると考えられる。 今後は、CagAトランスジェニックマウスの胃粘膜において、炎症性変化・腸上皮性変化を介さずに、粘膜細胞増殖動態が亢進するメカニズムを、in vivo、in vitroの系において明らかにして、さらに新たな治療法・予防法の開発を進めていく必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
CagAトランスジェニックマウスの胃粘膜の組織学的・免疫組織学的・分子生物学的検討を行う。粘膜細胞増殖動態/ERKの活性化が惹起されているメカニズムを明らかにする。 in vitroの系において、さらに細胞生物学的にCagA発現の発癌ポテンシャルを明らかにし、他のリスクファクターとの相互作用を明らかにする。
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