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2012 年度 実施状況報告書

肝線維化を抑制する活性化星細胞特異的インテグリンの抗体:作用機序解明と治療の展開

研究課題

研究課題/領域番号 24659367
研究機関広島大学

研究代表者

横崎 恭之  広島大学, 保健管理センター, 准教授 (80210607)

研究分担者 菅野 啓司  広島大学, 大学病院, 助教 (30448237)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードインテグリン / 線維症 / 肝硬変 / モノクロナル抗体 / 抗体医薬
研究概要

我々の作製したインテグリンα8β1に対する抗体は、肝臓の線維化を2種のマウスモデル(胆管結紮、四塩化炭素投与)で阻害した。その機序を確かめるため、本研究ではα8β1の下流シグナルの作用を中心に解析を進めている。平成24年度は ①α8β1シグナルが星細胞の筋線維芽細胞(MF)への分化を誘導するか、②α8β1はTGFβを活性化するか、③α8β1シグナルの下流で発現を誘導される遺伝子はどれか、の3点について検討した。
まず、α8β1シグナルと星細胞MF化との関係について、肝星細胞株であるLX2細胞を用いて検討した。LX2はインテグリンα8β1を発現していないため、α8-cDNAを導入してα8β1を発現させたLX2/α8細胞を作製した。ベクターだけを導入したLX2/mock(対照)とLX2/α8を同時にα8β1のリガンドであるテネイシン上で培養した場合、MF化の指標であるα-SMA遺伝子 (Acta2) の発現上昇がLX2/α8だけに認められた。次に、インテグリンの中にはTGFβ活性化作用を持つものがあるため、α8β1に関してもその作用を検討した。TGFβのバイオアッセイの世界標準であるMv1Lu細胞を用いて上述のLX2/α8とLX2/mockのTGFβ活性可能を比較したところ、両者の間には差が認められず、LX2細胞の膜表面に発現したα8β1にはTGFβ活性化能は存在しないことが示唆された。最後に、α8β1シグナルにより発現誘導される遺伝子に関しては、肝線維化モデルマウスの肝の遺伝子発現の網羅的解析をmicroarrayを用いて行い、抗体投与・非投与群間で比較したところ、抗体投与により発現レベルが低下している遺伝子群が同定された。
これらより、α8β1シグナルは特定の遺伝子の発現を誘導し、星細胞の筋線維芽細胞化に働くが、TGFβ活性化能は弱いと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、研究期間内の達成目標として、1) α8β1シグナルの筋線維芽細胞への分化誘導作用、 2) α8β1シグナルが発現に影響する遺伝子群の同定、 3) α8β1のTGFβの活性化能、4) TGFβとα8β1由来シグナルのクロストーク 5) 星細胞活性化時のα8β1出現の肝線維化への必要性の5点を掲げてスタートしたが、「研究実績の概要」の項に記したように平成24年度には1), 2) および3)がほぼ達成されている。

今後の研究の推進方策

平成25年度の推進方策は、平成24年度に得られた結果の信頼性を上げるために若干の補足実験を行うことと、残りの2つの達成目標へ向けての実験である。
平成24年度の結果である、「α8β1シグナルの星細胞の筋線維芽細胞への分化誘導」については、α8β1からLX2/α8にシグナルが入っている事、星細胞特異的な現象かを確かめる。「α8β1のTGFβ活性化」については、LX2以外の細胞株を用いて検討する。インテグリンによるTGFβの活性化には細胞の張力が必要であるため、細胞の種類に依存する可能性があり、他の細胞でも試してみる必要があると思われる。「α8β1シグナルで発現誘導される遺伝子」に関しては現在得られている約20種からα8β1シグナル特異的なものを選抜する。この遺伝子群には、コラーゲン遺伝子、αSMAなど線維化の指標となる遺伝子が多数含まれており、実験が正しく組織の遺伝子発現を反映できていることを示すと同時に、α8シグナルよりむしろ線維化の軽減に影響された遺伝子群も含まれると思われるためである。
残りの目標、「TGFβとα8β1由来シグナルのクロストーク」に関しては、マウス肝線維化モデルの抗体投与・非投与群におけるpSmad解析を基盤として、差が見られた場合は細胞レベルでの追認を行い、「星細胞活性化時のα8β1出現の肝線維化への必要性」は星細胞特異的にα8を欠損するマウスを作製する予定である。

次年度の研究費の使用計画

細胞培養、遺伝子発現解析、タンパク発現解析などに必要な培地や試薬、さらに星細胞特異的α8コンディショナルKOマウスの作製のための交配用マウスの入手、それらを含めた実験用動物の購入費、同維持管理費などに使用する。
他に、成果発表のための旅費、英文校正、投稿料などに使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Deletion of CD9 diminishes lymphangiogenesis in vivo and in vitro2013

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki T, Takeda Y, Maruyama K, Yokosaki Y, Tsujino K, Otani Y, Tachibana I, Kawase I, Kumanogoh A
    • 雑誌名

      J Biol Chem.

      巻: 288 ページ: 2118-2131

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.424291

  • [学会発表] インテグリンα8β1 機能阻害モノクローナル抗体の認識部位の同定2012

    • 著者名/発表者名
      西道教尚、横崎恭之
    • 学会等名
      第85回日本生化学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] インテグリンα8β1 は活性化肝星細胞に発現し肝線維化を促進する2012

    • 著者名/発表者名
      西道教尚、菅野啓司、仙谷和弘、安井弥、横崎恭之
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] Integrin α8β1 As A New Therapeutic Target For Tissue Fibrosis2012

    • 著者名/発表者名
      Norihisa Nishimichi, Keishi Kanno, Neil C. Henderson, Dean Sheppard, Yasuyuki Yokosaki
    • 学会等名
      American Thoracic Society, 2012 International Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, CA, USA
    • 年月日
      20120518-20120523
  • [学会発表] インテグリンとVEGFR-3の仲介役テトラスパニンCD9はリンパ節転移 (リンパ管新生) を促進する2012

    • 著者名/発表者名
      岩崎剛雄, 武田吉人, 横崎恭之, 辻野和之, 木島貴志, 立花功, 川瀬一郎, 熊ノ郷淳
    • 学会等名
      第52回日本呼吸器学会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20120420-20120422
  • [備考] インテグリン治療開発フロンティア研究室

    • URL

      http://home.hiroshima-u.ac.jp/integrin/Home.html

  • [産業財産権] インテグリンα8β1の機能を阻害する事による線維化の抑制2013

    • 発明者名
      横崎恭之
    • 権利者名
      広島大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2013/059368
    • 出願年月日
      2013-03-28
    • 外国

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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