研究概要 |
本研究では、インテグリンα8β1が線維化を誘導する機序に関して検討した。その結果、α8β1を介してシグナルが星細胞に入ることにより筋線維芽細胞への分化が促されること、およびα8β1が他のインテグリンで線維化誘導機序とされているTGF-β活性化能を有していることを見いだした。 まず、肝星細胞株LX2細胞をPoly-L-Lysine, ネフロネクチン、テネイシン、ラミニン上でそれぞれ培養した場合、いずれのケースもACTA2遺伝子 (α-SMA) の発現量に差を認めず、分化誘導は認められなかった。ところが遺伝子導入によりα8β1を発現させたLX2/α8はネフロネクチン、テネイシン上で培養するとラミニン上では変化ないのと対称的に、ACTA2遺伝子発現の上昇を認めた。この上昇はsi-RNAを用いてα8発現を低下させると失われることから、α8β1を介した現象であることが確かめられた。 TGF-βの活性化能に関しては、ヒト大腸がん細胞株SW480/α8にはTGF-β活性化能は認めなかった。星細胞株LX/α8または線維芽細胞株MRC5 (α8発現あり) にも活性化能は認めなかった。しかし、ラットの肝臓から分離した活性化星細胞にはTGF-βの活性化能を認めた。これらのことから、α8β1は潜在型TGF-βに結合し活性化させ得るが、発現する細胞の種類に影響されることが示唆された。細胞の収縮能が重要であるのかも知れない。また、星細胞は活性化に伴い自らの周辺のTGF-β を活性化させ、その活性化TGF-βにより自身の筋線維芽細胞への分化が進めるものと考えられた。
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