研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)により産生されるウイルス蛋白は、HCV感染に対する宿主免疫応答に対し抑制的に作用し、持続感染に寄与していると考えられている。一方、我々は、ALTが正常を持続するHCV感染者血清中には補体C4の断片など、いくつかの蛋白が増加していることを血清プロテオミクスから見出した。本研究では、補体C4断片化とHCV由来蛋白との関連について検討することを目的とした。補体C4にHCV NS3/4Aプロテアーゼ、Core、もしくはNS5をそれぞれ混合し、補体C4が切断されるかを検討した。C4にNS3/4Aプロテアーゼを混合すると、約17kDaの2つの蛋白と約15kDaの1つの蛋白断片を検出した。CoreとNS5はC4には作用しなかった。また、約17kDa蛋白のN末端はそれぞれC4のSer-1584とAla-1591、約15kDa蛋白のN末端はC4γ鎖のN末端(Glu-1454)であった。すなわち、NS3/4Aプロテアーゼは、C4のCys-1583とSer-1584、Cys-1590とAla-1591の間を切断すると考えられた。さらに、NS3/4AプロテアーゼによるC4の断片化はセリンプロテアーゼ阻害剤により抑制された。次に、補体の古典経路活性化を、感作羊赤血球(EA)に補体C1、C4、C2とC4欠損モルモット血清を順に添加した際の溶血度により評価した。EA添加前、C4には各種濃度のNS3/4Aプロテアーゼを作用させ、古典経路活性化に及ぼすNS3/4Aプロテアーゼの影響を検討した。NS3/4Aプロテアーゼは濃度依存的にC4に作用し古典経路活性化を低下させ、この活性低下はセリンプロテアーゼ阻害剤により阻止された。以上のことから、in vitroではHCV NS3/4Aプロテアーゼは補体C4を直接切断し、補体の古典経路活性化を抑制すると考えられた。
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