研究課題/領域番号 |
24659375
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
金井 隆典 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (40245478)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腸管免疫 / 炎症性腸疾患 / 遺伝子導入 / 制御性T細胞 / 細胞療法 / メモリーT細胞 |
研究概要 |
炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎およびクローン病は再燃と緩解を繰り返し生涯にわたり治療の継続を余儀なくされる難病である。IBDに生物学的製剤の臨床応用が開始され従来の治療法に比べ格段と進歩したが決して根治に至るものではない。しかし、斬新なアイデアからスーパー新規治療法の開発のゴール達成まで執念する必要がある。今回、我々はIBDの病態は、疾患のプロトタイプを記憶した細胞、すなわち、腸炎惹起性記憶(メモリー)T細胞が生涯にわたって全身に播種した病態であるという独自の仮説 (Kanai T, et al. Inflamm Bowel Dis. 15: 926-34, 2009)に立脚し、抗原記憶を‘刺激性’から‘抑制性’へとコンバートする免疫系のリセットという独創的な細胞療法を確立し、IBD根治への挑戦的な研究を2年間の計画で1年目の研究を実施した。平成24年度では、遺伝子導入によって刺激性から抑制性記憶T細胞へのコンバートをin vitroで確認した。さらに重症のIBD患者を対象に、腸管指向性をすでに獲得した手術検体から得られる腸炎惹起性CD4+記憶T細胞をin vitroで抑制性記憶T細胞へのコンバートをFOXP3遺伝子導入ベクターによる遺伝子治療を実施し、IBDを含む免疫難病の根治を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスIBDモデル大腸炎粘膜からの腸炎惹起細胞が、制御性T細胞へのコンバートを目的とした遺伝子導入は、in vitroで抑制活性を有する点を明らかとした点は、大きな前進と考えている。一方、Th17細胞への分化遺伝子導入は完成されておらず、平成25年度完成を目指すものとする。さらに、平成24年度は、慶應病院、横浜市民病院、社会保険中央病院とのIBDコンソシアムがさらに強固な協力体制となった点、ヒトへの応用を目指す、平成25年度へ大きな進展として評価されると考える。現在、ヒト遺伝子ベクターの構築はほぼ完成しており、平成25年度へ向けた準備は整っているものと考える。さらに、本グループは世界屈指のIBDモデルを用いた評価体制は整っているので、平成25年度へむけた、モデル動物を用いた細胞療法も実現可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス腸炎モデル用いた腸炎惹起性記憶細胞のコンバート;平成24年度はマウスでのin vitroで検証に成功し、本年度はin vovでの実証を推進する。1)CD4+CD45RBhigh naïve T細胞をRAG-2-/-マウスへ移入し、IBDモデルを作製し、大腸炎浸潤CD4+ T細胞を単離する。本モデルの安定性に関しては、我々のグループは世界で最も多く報告しており十分に精通している(Gastroenterology 124: 410-421, 2003. J Immunol 171: 708-716, 2003. J Immunol 171: 4156-4163, 2003.)。2)Foxp3-lentiverusによる腸炎惹起性CD4+ T細胞へのトランスフェクト条件の検討と効率の検討。3)トランスフェクト細胞の免疫抑制機能をin vitroで検討。4)トランスフェクト細胞の免疫抑制機能をin vivoで検討。 ヒトIBD患者腸炎惹起性記憶C細胞のコンバート細胞の抑制能;1)Foxp3分子、RORgtまたはコントロール分子とGFP-tag分子挿入lentivirusベクターを作製する。2)Foxp3-lentiverusによるヒトIBD腸炎惹起性CD4+ T細胞へのトランスフェクト条件の検討と効率の検討。3)トランスフェクト細胞の免疫抑制機能をin vitroで検討。a)トランスフェクト細胞の内因性Foxp3分子、IL-10、TGF-b、CTLA-4、PD-L1分子の発現; b)トランスフェクト細胞のT細胞増殖抑制能; c) コントロールとFoxp3トランスフェクト細胞間でのマイクロアレ解析
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書計画案通り、動物(マウス)購入費、DNA解析消耗品、免疫学的解析消耗品に充てるが、研究完成に当たり、若干の比率変更の可能性がある。また、成果に関しては国際一流紙への発表を考えており、掲載費に充当する予定である。
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