研究概要 |
酸化ストレスが非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)やC型慢性肝炎の進展に関わることは広く認識されているが、肝細胞壊死に伴う炎症反応などの影響が大きく、酸化ストレスが肝線維化を促進させる機序は不明であった。本研究は、生体内の酸化ストレス発生量を調節可能な遺伝子改変マウスを用いて、肝線維化進展に及ぼす酸化ストレスの影響を直接的かつ特異的に検出する評価系を構築することを目的とした。 ミトコンドリア電子伝達系のsuccinate dehydrogenase cytochrome b (SDHC)遺伝子に変異を有し、テトラサイクリン誘導下に活性酸素を過剰産生するトランスジェニックマウス(Tet-mev-1)から分離された肝細胞では、ミトコンドリア膜電位の変化が見られ、これと共培養した星細胞のコラーゲン遺伝子プロモーター活性は3.5倍に増加した。また、本マウスの肝細胞では野生型マウス由来の肝細胞と比較して、CCL3, CCL4, CCL8, CCL12などのCCケモカインリガンドの発現が20倍ないし300倍と著しく増加していた。本マウスに高脂肪・高ショ糖食を給餌すると、これらのケモカインの発現が相乗的に増加した。 以上の結果より、ミトコンドリア由来の酸化ストレスはCCケモカインの発現増加を介して肝線維化を直接的に進展させること、またその作用は高脂肪・高ショ糖食の給餌により相乗的に増強されることが明らかになり、NASH進展における食事負荷と酸化ストレスの関与を解明する上で有用なモデルになり得ると考えられた。
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