研究課題
【目的】われわれはC型肝炎ウイルス(HCV)による酸化ストレスの亢進、ミトコンドリア障害と肝発癌の関連を報告してきた。一方で障害を受けたミトコンドリアは選択的autophagy(mitophagy)により選択的に除去され、品質管理が行われている。今回HCVがmitophagyを抑制し、障害ミトコンドリアが排除されず酸化ストレスを増強することで肝発癌を促進させるのではないかという仮説のもと、HCVがmitophagyに及ぼす機構について検討した。【方法】HCVクローンであるJFH1感染Huh-7細胞を用いてmitophagy制御分子の解析を行った。さらにHCV全遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(HCV-TgM)、HCVを感染させたヒト肝細胞キメラマウスを用いて同様の解析を行った。【結果】Mitophagyではミトコンドリアの膜電位の低下にともないParkinがミトコンドリアに局在しミトコンドリアをautophagy経路により分解する。PINK1のミトコンドリアへの局在及びParkinのリン酸化にはHCV蛋白の影響を認めなかったが、ParkinのN末端側とHCVコア蛋白が結合することによりマイトファジーのinitial stepであるParkinのミトコンドリアへの局在が阻害され。Parkinのミトコンドリアへの局在障害に引き続き、mitophagosomeの形成ならびに消化はすべて抑制された。この現象はParkinやHCVコア蛋白を金あるいはDABで標識した免疫電顕でも確認することができた。さらにマイトファジーが抑制された状態では酸化ストレスが増強することも確認した。またParkinをノックアウトするとHCVの発現が抑制された。以上の成果はAmerican Journal of Pathology 2014に掲載された。
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