研究課題
動脈硬化の形成・進展には、血管壁局所における炎症性サイトカインを主体とする慢性炎症が重要な役割をはたしている。ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、炎症惹起性Th1サイトカインと抗炎症性Th2サイトカインのTh1/Th2バランスを調節し、生体において炎症を制御するという極めて重要な役割を担っている。本研究は、動脈硬化巣における炎症の遷延化は、NKT細胞の機能低下に起因する炎症制御機構の破綻が原因であるという仮説のもと、NKT細胞活性化によるTh1/Th2バランスの適正化を介した血管壁の炎症制御というコンセプトに基づき、新規動脈硬化治療の開発を目指すものである。肥満マウスへのアンジオテンシン(Ang)II持続投与大動脈瘤モデルを用いて、NKT細胞活性化の効果を検討した。2ヶ月齢雄性ob/obマウスに皮下浸透圧ミニポンプでAngII(1000ng/min/kg)あるいはPBS (PBS群) を持続投与した。AngII持続投与マウスをさらに2群に分け、NKT細胞を特異的に活性化するα-ガラクトシルセラミド (αGC; 0.1 μg/g体重) あるいはPBSを反復投与した。4週間後に腹部大動脈最大径は、PBS群に比しAngII-PBS群で有意に増大した。PBS群に比しAngII-PBS群において、大動脈瘤組織でのF4/80 (Mφマーカー) 遺伝子発現が2.5倍、MHC-classII (Mφ活性化マーカー) が4.6倍、MMP-2 が5.0倍有意に増加した。αGC投与によるNKT細胞活性化によって血圧値は両群間で同等であったが、腹部大動脈最大径がAngII-PBS群に比しAngII-αGC群で有意に縮小した。以上より動脈硬化性血管病変の形成・進展過程にNKT細胞による炎症制御機構が密接に関与していること、さらにNKT細胞活性化が新規動脈硬化治療となることがあきらかとなった。
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