研究課題/領域番号 |
24659381
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
永井 敏雄 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334194)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 心筋幹/前駆細胞 / 心筋再生 / 心筋梗塞 / 自己組織化ナノペプチド / 細胞移植 |
研究概要 |
1.内在性心筋幹/前駆細胞由来新生心筋の同定 申請者等が作成したalphaMHC-MerCreMer/CAG-LacZトランスジェニックマウスはタモキシフェン投与直後にはalphaMHC promoterを介して、心筋細胞のほぼ100%にbeta-galactosidaseが発現してX-gal染色陽性となり、タモキシフェン投与後に認められるX-gal染色陰性心筋細胞を新生心筋細胞として同定できる。妊娠中の親マウスに核酸類似体のBrdUを投与して仔のalphaMHC-MerCreMer/CAG-LacZトランスジェニックマウスを標識し、さらに、12週齢でタモキシフェン投与後に心筋梗塞を作成し、心筋梗塞後にEdUを投与して細胞周期に入った細胞を標識した。その結果、心筋梗塞境界部の新生心筋細胞にBrdU陽性またはEdU陽性の心筋細胞が認められた。BrdUは細胞周期の遅い幹細胞由来の心筋細胞に相当し、心筋梗塞後には内在性心筋幹/前駆細胞が細胞周期に入り、心筋細胞に分化することを示唆した。 2.細胞移植による内在性心筋幹/前駆細胞の分化誘導効果の検討 自己組織化ナノペプチドを用いた心筋前駆細胞scaffoldを心筋梗塞モデルマウスの心膜腔内に移植すると、非移植群に比較して梗塞部位に多くの血管新生が認められた。また、心筋前駆細胞scaffoldは移植後4週間後までに生分解されるが、移植されたred fluorescent protein陽性心筋前駆細胞の生着が確認された。次にalphaMHC-MerCreMer/CAG-LacZトランスジェニックマウスにタモキシフェン投与後に心筋梗塞を作成し、心筋前駆細胞scaffoldを移植した群と非移植群作成で新生心筋数を定量化したところ、細胞移植群では心筋新生が促進された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はBrdUとEdUの二種類の核酸類似体を細胞に取り込ませて、幹細胞と細胞周期に入った細胞を同一の個体で鑑別できる方法を確立し、alphaMHC-MerCreMer/CAG-LacZトランスジェニックマウスに応用することにより、心筋梗塞後の新生心筋細胞の系譜と増殖活性を解析する方法へ昇華させることに成功した。 自己組織化ナノペプチドを用いた心膜腔内心筋前駆細胞scaffold移植方法の心筋梗塞モデルに対する有用性を、そのメカニズムと細胞の良好な生着の両面から確認することができた。また、心内膜腔内心筋前駆細胞scaffold移植方法をalphaMHC-MerCreMer/CAG-LacZトランスジェニックマウスに応用し、細胞移植が心筋新生を促進することを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に確立したBrdUとEduによる新生心筋の系譜と細胞周期活性を解析する系を自己組織化ナノペプチドを用いた心膜腔内心筋前駆細胞scaffold移植方法に応用する。具体的には、妊娠中の親マウスに核酸類似体のBrdUを投与して仔のalphaMHC-MerCreMer/CAG-LacZトランスジェニックマウスを標識し、さらに、12週齢でタモキシフェン投与後に心筋梗塞を作成しする。心筋梗塞作成後、心筋前駆細胞scaffoldを移植し、かつ、EdUを投与して梗塞後細胞周期に入る細胞を標識する。梗塞4週間後に新生心筋のBtdUおよびEdUの核内取り込みの有無について組織学的に評価する。本解析により、細胞移植による内在性幹細胞の活性化動態が明らかになる。 次に、新生心筋細胞、既存の心筋組織、移植床領域をレーザーマイクロダイセクション方式により採取し、各組織の遺伝子発現についてDNAマイクロアレーにより網羅的に解析を行う。心筋前駆細胞scaffold移植後のXgal染色陰性新生心筋細胞が集簇せず散在するために、マイクロダイセクションによる選択的組織回収が困難な場合は、niche構造に集約して、種々の細胞外マトリックス抗体、インテグリン抗体を用いた免疫組織染色を行い、発現の有無、局在について新生心筋細胞と既存の心筋細胞について比較解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究には、遺伝子改変マウスの飼育が必須であり、実験動物および動物飼料費を計上する。また、心筋前駆細胞移植床作成に使用する細胞培養液、血清、滅菌プラスチック製品、免疫組織染色に必要な抗体試薬、レーザーマイクロダイセクションおよびDNAアレー解析にともなう消耗品費として使用する。
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