肥満内臓脂肪組織では炎症が惹起され、インスリン抵抗性や心血管疾患の基盤病態となる。肥満により、常在するM2型脂肪組織マクロファージは減少し、M1型炎症性マクロファージが増加(マクロファージ極性の変化)する。その結果、脂肪組織炎症が引き起こされる。しかしながら、この極性の変化がどのように制御されているかはほとんど分かっていない。本研究計画では、M2型組織マクロファージの退出(egression)とM1型マクロファージの集積という両面について検討する。 ①脂肪組織マクロファージの退出(egression)機構の解析 マクロファージを蛍光染色することによりマクロファージの移動を追跡する実験法の可能性を検討した。特に、脂肪組織に存在するマクロファージの移動を、この蛍光染色で解析するとともに、脂肪移植実験等を用いて、フローサイトメトリーでも解析した。 ②M1マクロファージの集積機構の解析 我々はこれまでに、肥満脂肪細胞でS100A8発現が増加することを見いだしている。また、腎臓においてS100A8が炎症性単球のリクルートメントとM1マクロファージへの活性化に重要なことを見いだした。そこで、S100A8のM1マクロファージ集積への寄与を検討する。脂肪細胞特異的S100A8トランスジェニックマウスを作製し、マクロファージ集積への作用を検討した。また、脂肪細胞特異的ノックアウトマウスも作製した。S100A8がマクロファージに作用する新規アディポカインである結果を得た。
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