研究課題
心血管疾患の病態においては内分泌制御が関与することが明らかになり、心血管内分泌分野として近年注目されている。しかし、今までは心臓利尿ペプチド、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン等の生理活性ペプチド等、受容体等を標的とした治療法が中心であった。本研究では、動脈硬化性疾患に選択的に見られる心血管生理活性ペプチドの新規プロセシングに作用する酵素を対象とし、その特定および制御機構を明らかにする。動脈硬化促進ペプチダーゼを同定し、その過程に関わる酵素またその活性制御の機構を明らかにすることにより、創薬への糸口としたい考えである。平成24年度は、動脈硬化時にみられる心臓に選択的な生理活性ペプチドがプロセシングを受けて生じるフラグメントの生成メカニズムを追求した。培養細胞として、ヒト心筋細胞を用い、血中で見られるプロセシングのモデル系の構築を行った。その結果、血中で見られるプロセシングと同様のフラグメントを検出しうる培養細胞モデル系の構築に世界で初めて成功した。このプロセシングのメカニズムにはある種のプロテアーゼが関与しているということを作業仮説として、システマチックにプロテアーゼの阻害剤をこのモデル系に加え、検討した。その結果をもとに、データベースの検索を行ったところ、このプロテアーゼは因子Xではないかと考えられた。さらに因子Xのヒトリコンビナントがこの生理活性ペプチドをプロセスするかどうかについて、質量分析計を用いて検討した。
2: おおむね順調に進展している
動脈硬化進行時にみられる心臓に選択的な生理活性ペプチドがプロセシングを受けて生じるフラグメントの生成メカニズムを追求することを平成24年度の計画としていたが、その計画通り、ヒト心筋細胞を用いて、血中における生理活性ペプチドのプロセシングのモデル系を構築することができた。また、このプロセシングに関与するプロテアーゼを同定するために、システマチックにプロテアーゼの阻害剤をこのモデル系に加え、検討し、このプロテアーゼが因子Xではないかという結果を得た。さらに、このプロテアーゼが実際に生理活性ペプチドをプロセスするかどうかについて検討することができた。このように、当初の計画どおりおおむね順調に進展している。
平成25年度は、平成24年度の結果の検証を行うとともに、この酵素の活性の制御機構を解明するために、化合物ライブラリーを用いた活性制御物質のスクリーニングを目指す。リード化合物の同定ができたら、細胞実験系でプロセシングへの影響を検討する。また、実際の臨床検体においてこの酵素の活性が見られるかどうかの検討を行い、病態との相関の検討を行い、疾患診断法の開発につなげることを目指す。このような検討は、動脈硬化の新規診断薬、さらには抗動脈硬化薬の開発の糸口となることが期待される。
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