研究課題/領域番号 |
24659385
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
成 憲武 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30378228)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カテプシンK / 心房細動 / 心房リモデリング / マトリックス蛋白 / バイオマーカー |
研究概要 |
[背景] Cysteinnyl cathepsin K(カテプシンK)は強力な哺乳類のコラーゲナーゼである。近年、atrial fibrillation (AF)における心房のリモデリングには細胞外マトリックスのコラーゲナーゼによる分解の関与が指摘されている。今回、我々はカテプシンKがAFにおける心房リモデリングに対するバイオマーカーになりうるかを検討した。 [方法、結果] 我々は当院でアブレーションを施行した146人のParoxymal AF (PAF)、63人のpersistent AF (PsAF)患者と心房疾患を有しない112人(non-AF)を比較検討した。PlasmaカテプシンK、IL-β、高感度CRP、I-PINP、ICTPを入院時に測定した。カテプシンKは有意にnon-AF群よりAF群で高値だった(AF vs non-AF:13.1±6.7ng/ml vs 5.3±2.9ng/ml,P<0.01)。同様に、IL-β、高感度CRP、ICTPもAF群で有意に高値だった(P<0.05)。AF群の中ではカテプシンK、IL-βはPAF群に比べてPsAF群で高値だった(P<0.05)。Spearman's correlation testではカテプシンKはIL-β(P<0.01)、ICTP(P<0.05)、左房径(P<0.05)と有意に相関し、多変量解析ではカテプシンKが独立したAFの予測因子だった。また、アブレーション1年後の再発群では非再発群と比較し、カテプシンは有意に高値だった(再発群 vs 非再発:14.3±4.4ng/ml vs 11.7±4.1ng/ml,P<0.01)だった。 [結論] 以上より、カテプシンKが心房リモデリングや治療の指標のバイオマーカーになりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画以上に進んでいる理由 1)研究代表者は、『カテプシンと心血管病疾患』に関して絞って研究を行っており、本研究申請にあたって、既に予備実験も行い、一定の成果が得られていた。 2)臨床研究に関しては、研究協力者である循環器内科の不整脈クループの因田・藤田先生のサンプル提供と解析の協力で、完成した。 3)部分的基礎実験は、研究協力者である嶋野先生の実験実施とともに解析を行った。 以上より、学会発表(平成24年度心臓病学会で若手研究優秀賞獲得:藤田)と論文投稿中(International Journal of Cardiology2013年2月28日)である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究におけるウサギ高頻度ペーシング誘発心不全モデルは、連携研究者である嶋野が報告した(Shimano M, et al. Heart Rhythm. 2008;5:451-9)モデルと同じモデルを使用する。 方法:麻酔開胸下、心外膜リードを右室のfree wallに留置し、ペースメーカーを背部皮下に植え込む。同時にテレメトリー発信機を植え込む。毎分400回の高頻度ペーシングを4週間行い、心不全を作成し、次の検討を行う: 1.Microarray法を用い、正常と心房細動心房筋におけるカテプシンファミリー、炎症性サイトカインや増殖因子(transforming growth factor, peroxisome proliferator-activated factor (PPAR)α, β/δ, and γ)などの発現変化の網羅的解析を行う。 2.組織学的検討:Masson trichrome染色による心房筋繊維化、TUNEL蛍光法による心房筋アポトーシス、CD68やCD4/8抗体などの染色による炎症性細胞浸潤やリンパ細胞の浸潤などの検討を行う。 3.ラット胎児心房細胞を用い、細胞レベルでのカテプシンK発現調節機序、その酵素依存性コラーゲンとエラスチン分解能や心房筋細胞の低酸素誘導下でのアポトーシスへの関与の有無を検討する。 4.カテプシン阻害剤を投与し、上記の検討と心機能の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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