研究課題/領域番号 |
24659393
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣岡 良隆 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90284497)
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研究分担者 |
阿部 弘太郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20588107)
岸 拓弥 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70423514)
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キーワード | 循環器・高血圧 / 生理活性 / 生理学 / 薬剤反応性 / 神経科学 |
研究概要 |
肺高血圧は肺血管過収縮、肺血管リモデリング、病理学的変化からなり、右心不全を合併するときわめて治療が困難となる原因不明の病態である。従来、肺血管病変形成には腫瘍的な変化と同じような機序が推察されていたが、当該年度では血行動態の変化及び自律神経系・体液性因子の重要性を示すことができた。 まず、より強力なエンドセリン受容体拮抗薬(macitentan)の有効性やトロンビン受容体拮抗薬の有効性を示すことができた。これらの成績は肺高血圧の予防や発症後の進展抑制がある程度可能であることを示唆する。肺高血圧モデルとしては分担研究者である阿部が開発したラットにVEGF阻害薬を投与した後に低酸素状態を3週間、正常酸素状態に戻し5週間観察するモデルを用いた。このモデルの特徴は肺高血圧形成とヒト肺高血圧患者と類似した肺動脈の病理学的変化が認められることである。Macitentanによる治療は肺高血圧の進展と肺血管病変形成を抑制した。また、トロンビン受容体拮抗薬実験においてはモノクロタリン皮下注により惹起される肺高血圧モデルラットを用いて実験を行い、atopaxarが肺高血圧進展を抑制した。 さらに、片肺の肺動脈を縮めて肺血流を減らしてその血流から受ける負担を減らして、反対側の肺と病変の進行を観察した。その結果、血行動態的な負担を減らした肺では肺高血圧で認められる特徴的な病変形成が顕著に抑制された。 また、交感神経機能評価として用いるMIBGイメージングによって右心機能不全を評価することが肺高血圧に有効であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺高血圧モデルを用いた実験により、肺高血圧の発症・進展・病変形成に可逆性の部分があることを示すことができた。 手段としては強力にエンドセリン受容体をブロックすること、トロンビン受容体をブロックすることである。何よりも片肺の肺動脈を狭めて血流を減らすことによって反対側の肺病変は進行したが血流を減らした側の肺病変は顕著に抑制された。自律神経系がもたらす血行動態変化の重要性を示す重要な知見である。 さらに交感神経評価を行うMIBGイメージングによって肺高血圧における右心機能異常との相関を観察し得た。
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今後の研究の推進方策 |
まず、当該年度で得た結果をまとめ論文化する。査読者のコメントに基づき必要な追加実験を加える。Macitentanに関する論文は既に投稿し査読を受け追加実験を行っている。トロンビン受容体拮抗薬に関する論文は執筆中である。肺動脈バンディングによる血流負担軽減による肺血管病変改善に関する結果も必要な追加実験とともに論文執筆にとりかかっている。 自律神経系の関与については、肺高血圧モデルラットで交感神経系活性化が生じていることは観察している。特に右心不全を合併すると顕著になる。右心不全を合併すると右心の炎症性変化が明らかになってくることも見出している。自律神経を制御することによって炎症性変化抑制や予後改善につながるか否かを検討する。これらの点を踏まえた研究を進め完遂する。 迷走神経刺激は適切な刺激レベルを検討している。すでにテレメトリー植込下で血行動態観察を覚醒下で行いながら実施できるところまでは至っている。 MIBG心筋イメージングに関しても数を増やした後、論文化にとりかかる。
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