片側尿管結紮モデル (UUO) を施し尿細管に直接ストレスをかけると手術3日目から腎臓皮質尿細管上皮細胞において明らかなL-PGDSの上発現昇傾向を認めた。野生型とL-PGDSノックアウトマウス (L-PGDSKO) を比較したところUUO後の尿細管腔拡大、マクロファージ細胞浸潤様式には明らかな差を認めなかったにもかかわらず、UUO後10日目ではL-PGDSKOにおいて腎皮質間質線維化の進行が顕著に抑制されていた。PGD2受容体の発現を見たところCRTH2受容体の発現がUUOをかけたL-PGDSKOの腎皮質では有意に減少していた。CRTH2はTh2リンパ球に選択して強く発現しているため、UUO後のTh2リンパ球の浸潤様式を調べたところL-PGDSKOでは野生型に比べてTh2リンパ球の浸潤が有意に抑制されていた。Th2リンパ球が間質の線維芽細胞に働きかけて間質の線維化を促進している可能性を想定し、CRTH2ノックアウトマウス (CRTH2KO) にUUOをかけて検討したところ浸潤してくるTh2リンパ球の数には変化が認められないものの間質線維化の進行が顕著に抑制されていた。そこでUUOをかける前からCRTH2受容体拮抗薬CAY10471を経口投与したところUUOによる腎間質線維化の進行が有意に抑制された(特許申請:2011年4月)。別のCRTH2受容体拮抗薬でもUUO後の腎臓線維化が抑制されるか、あるいは、adenine投与による慢性腎臓病モデルでも腎臓線維化が抑制されるか、さらに検討を続けているところである。
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