研究課題
平成25年度の研究計画に沿って、ヒト気管上皮細胞を用いて以下を検討し、結果を得た:1)インフルエンザ感染前の中枢気道、肺胞の温度環境およびインフルエンザ感染時の温度環境に相当する33℃、37℃、39℃および40℃、42℃におけるインフルエンザウイルスの放出量は37℃が最も多く、33℃と39℃が次いで多く、40℃で減少し、42℃ではウイルスは検出できなかった。2)細胞傷害性を示す培養液乳酸脱水素酵素(LDH)濃度は40℃以上でウイルス感染前に上昇し、細胞傷害を認めた。3)酸性エンドゾームは細胞のイオン輸送を反映するため、細胞の生理機能の障害が示唆された。ウイルスの細胞質進入部位である酸性エンドゾーム数は39℃以上で減少した。4)気道炎症の指標である、インターロイキン(IL)-6も40℃でウイルス感染前に上昇し、すでに気道炎症を生じていることが示唆された。脱落細胞数は温度による違いを認めなかった。考察:ヒト気管上皮細胞においてインフルエンザウイルスの増殖能力は37℃が最大で、39℃では低下の程度は軽く、40℃以上で明らかに低下した。逆に39℃以上で細胞機能が低下し、40℃以上では細胞傷害および炎症惹起物質の増加が認められた。結論:インフルエンザ感染時に認められる39℃の発熱ではインフルエンザウイルスの増殖は低下せず、むしろ生体の細胞機能が低下し、重症化する可能性を生じることが明らかとなった。
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Journal of Infectious Disease
巻: 207 ページ: 692-693
10.1093/infdis/jis738