研究課題
われわれの臨床試験(N Engl J Med. 2010;362:2380-8)も一助となり、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌は、EGFR-チロシンキナーゼ阻害薬によって制御可能な癌と捉えられるようになった。そして治療の観点から、EGFR遺伝子変異が疑われる肺癌を効率的に見つけ出すことが望まれ、「腺癌、アジア系人種、女性、非喫煙者」という患者像が浮かび上がってきた。このことはEGFR遺伝子変異陽性肺癌の発生母地として、何らかの遺伝学的背景があることを示唆している。この遺伝学的背景を再認識させられる症例を、最近われわれは相次いで経験した(J Thorac Oncol. 2008;3:311-3)。まずは、7人の兄弟姉妹のうち、4人の姉妹に肺癌が発症している家系で、うち3人の肺癌細胞でEGFR遺伝子変異を確認している。点変異と欠失変異の二種類の遺伝子変異が姉妹内で混在していたことは、EGFR遺伝子変異そのものが遺伝しているわけではなく、発癌を導く遺伝学的背景が家系内に伝承されていることを示唆している。続いて経験したのは、母娘の家族内発症例で、いずれもEGFR遺伝子に点変異を有する肺癌であった。娘の発症年齢が若く若年性肺癌であったことからも、発癌の原因に遺伝学的背景が推察された。そこで当該研究では、エクソーム解析(全エクソンのシークエンシング)と、全ゲノム関連解析(GWAS、 genome-wide association study)を行うことによって、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにする。今年度は、当初の計画に従って、エクソーム解析で明らかになった遺伝子変異に対し、その機能評価を行った。
2: おおむね順調に進展している
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌は、「腺癌、アジア系人種、女性、非喫煙者」に多く、その発癌機構には遺伝学的背景が示唆されている。さらに最近われわれは、2家系6名の家族内発癌症例を経験し、その遺伝学的背景の存在を再認識させられた。そこで当該研究では、エクソーム解析と全ゲノム関連解析を行い、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにする。今年度は、当初の計画通り、エクソーム解析で明らかになった遺伝子変異に対し、その機能評価を行った。
当初の計画に従って、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにするために、全ゲノム関連解析を行う。その全ゲノム関連解析と、これまで行ってきたエクソーム解析の結果を合わせることによって、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の発癌機構を解明していく予定である。
試薬キットの導入などにより効率化を図り、今年度の使用額が予定額より下回ったために、次年度使用額が生じた。研究結果の再現性を確認するために、研究費の使用が当初の予定を上回ることが懸念されており、平成26年度分とあわせて、それに充てる計画である。
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