研究課題
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌は,「腺癌,アジア系人種,女性,非喫煙者」に多く,その発癌機構には遺伝学的背景が示唆されている。さらに最近われわれは,2家系6名の家族内発癌症例を経験し,その遺伝学的背景の存在を再認識させられた。まずは、7人の兄弟姉妹のうち、4人の姉妹に肺癌が発症している家系で、うち3人の肺癌細胞でEGFR遺伝子変異を確認している。点変異と欠失変異の二種類の遺伝子変異が姉妹内に混在していたことは、EGFR遺伝子変異そのものが遺伝しているわけではなく、発癌を導く遺伝学的背景が家系内に伝承されていることを示唆している。続いて経験したのは、母娘の家族内発症例で、いずれもEGFR遺伝子に点変異を有する肺癌であった。娘の発症年齢が若く若年性肺癌であったことからも、発癌の原因に遺伝学的背景が推察された。そこで本研究では,患者末梢血DNAを用いて,家族例6名のエクソーム解析と孤発例の全ゲノム関連解析を行い,EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにする。研究計画の最終年度にあたる今年度は、エクソーム解析で明らかになった遺伝子変異によって、当該蛋白質のアミノ酸置換が起こり、三次元構造に変化を来たすことを明らかにした。さらに、この三次元構造の変化によって、当該蛋白質の機能は低下していることも明らかにした。以上より、今回のエクソーム解析で同定した遺伝子変異が、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常になりうると考えられた。
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