研究課題
健診センター受診者で以下の2条件を満たす日本人成人967名について喫煙行動に対するゲノム網羅的な遺伝子解析(GWAS)を実施した。1)喘息、COPD、陳旧性肺結核などの呼吸器疾患を有さない、2)研究内容、血液の提供への同意。対象の内訳は非喫煙者607名、過去喫煙者199名、現喫煙者161名で、喫煙者のうち喫煙指数200以上の重喫煙者は233名、200未満の軽喫煙者は734名であった。GWASは喫煙の有無(現喫煙+過去喫煙 vs 非喫煙)、喫煙中止の有無(現喫煙者 vs 過去喫煙者)、さらに喫煙指数(重喫煙 vs 軽喫煙)を対象に解析を行った。また過去にこれらの喫煙行動と関連する遺伝子を検索したところ、16の遺伝子または遺伝子領域において有意な遺伝的関連が報告されていた。当該年度ではこれらの16遺伝子の日本人集団における影響を検討した。喫煙の有無では5遺伝子、喫煙中止の有無では4遺伝子、喫煙指数では7遺伝子においてp=0.05のレベルで有意な関連が認められた。特にセロトニン受容体(HTR2A)遺伝子及びニューレキシン(NRXN1)遺伝子はすべての表現型において有意な関連が認められた。セロトニンとニューレキシンはいずれもニコチン刺激によって脳内で誘導され、禁煙に伴う禁断症状の出現にも深く関与している。さらに、これまで複数の検討でHTR2A遺伝子とNRXN1遺伝子と喫煙行動との関連が報告されていることから、これらの遺伝的な要因は人種差を超えて喫煙行動に影響を与えていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでの検討において日本人集団の喫煙行動に影響を与える候補遺伝子を複数同定することができた。また現時点で約40名の禁煙治療を行った患者の臨床データ(禁煙治療の成否)及び遺伝子検体の収集が終了している。
日本人を対象としたGWASから得られた2つの遺伝子、HTR2A及びNRXN1について以下の3つの表現型を対象にこれらの遺伝的な影響を確認する。①禁煙治療の成否、②COPDの発症、③COPDや喘息の重症度。これらの一連の研究は喫煙行動に影響を及ぼす遺伝素因を解明すると同時に、COPDや喘息病態の喫煙による重症化、吸入ステロイド(ICS)などへの治療反応性の低下を規定する分子メカニズムの解明に向けた基礎的データになることが期待される。
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