研究課題
サルコイドーシスの本質である細胞性免疫反応で責任抗原候補を選別する手法の開発に着手した。アクネ菌の分泌発現系ライブラリを作製し、本菌感作マウス細胞を用いてリンパ球刺激試験(LST)によるスクリーニングを施行した。作製した分泌系ゲノムライブラリはアクネ菌由来の遺伝子が正確なフレームでクローニングされている確率、さらにその遺伝子がコードするタンパクが分泌される割合が低率であった。この分泌系ライブラリ由来のタンパクを抗原としたスクリーニングでは感作マウスのstimulation indexが2.0以上であり、かつ未感作マウスとの比が2倍以上であったcloneを選別した。計1132 clonesに対しリンパ球刺激試験(LST)を施行し、「PTS systemマンノース特異的IIB複合体(IIBC)」を得た。IIBCの組み換えタンパクを作製しLSTを施行した結果、本症患者で細胞性免疫反応は誘導されなかった。これは組み換えタンパクが大腸菌内でアクネ菌と異なる糖修飾を受けるなど本来のタンパクと抗原性が異なることも考えられるが、感作マウスにおいて抗原となりえたタンパクの可能性もある。本スクリーニング法は効率が悪いと考え、液性免疫反応を指標とすることになるが、本症患者および健常人の血漿を用いて本菌の菌体成分に対しwestern blotを施行し、疾患特異的な反応を見せる菌体成分の同定を目指した。Western blotはIgG, IgA, IgMクラスごとに施行した。検出されたバンドは分子量解析ソフトにより分子量を決定し、陽性バンドのサイズごとにグループ化した。疾患特異的なバンドはIgGクラスで2サイズ、IgAクラスで6サイズ、IgMクラスで3サイズであったが、患者群における陽性頻度は最大で8%であった。IgAクラスでは53 kDaのバンドにおいて患者群に定量的に有意差を認めた。
2: おおむね順調に進展している
細胞性免疫反応を指標とした抗原スクリーニング法の開発は、分泌発現系cDNAライブラリの質に改善の余地があるものの、起因体感作マウス細胞を用いてリンパ球刺激試験による抗原スクリーニングを行う当初の計画まで到達した。しかしながら、このままスクリーニングを継続した場合、最終目的である責任抗原となりうる起因体由来のタンパク抗原を同定するまでには膨大な労力と費用を費やさなければならず、期間も必要となる。それを避けるためにはライブラリのvectorの改良などによる効率の改善を図らなければならない。そこで並行して、サルコイドーシスに関しては本症患者および健常人の血漿を用いて本菌の菌体成分に対しwestern blotを施行し、疾患特異的な反応を見せる菌体成分の同定を目指した。鳥関連過敏性肺炎に関しても同様に患者および健常人の血漿を用いてハトの各臓器から抽出したタンパク成分に対し、western blotによる液性免疫反応の比較を行っている。
サルコイドーシス患者で特異的に検出されたバンドならびに患者群で定量的に有意差を認めたバンドのタンパク抗原を同定する。組み換えタンパク作製後患者における液性および細胞性免疫反応を確認し、責任抗原候補であるかを検証する予定である。鳥関連過敏性肺炎では、現在患者と健常人で認められたバンドパターンを解析中である。患者群に有意なバンドを選別し、サルコイドーシス同様タンパク抗原を同定後組み換えタンパクによる免疫反応性の検証へと進める予定である。
サルコイドーシス、鳥関連過敏性肺炎ともに起因体由来のタンパク抗原の中から患者血漿と反応を示すものをwestern blotにて選別し、選別したバンドのタンパク抗原を同定するためにTOF-MAS解析を行う。解析は学内施設に委託するが、その解析料を研究費から支出する。また、解析により同定されたタンパク質の組み換え体の作製(発現・精製)ならびにこれを使用した免疫系のアッセイに必要となる試薬を含む消耗品の購入も研究費でまかなう。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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