研究実績の概要 |
幹細胞は自己複製能と多分化能をもつ細胞であり,臓器に特異的な組織の幹細胞が必要に応じて自己複製と分化を繰り返すことにより臓器機能が維持されている。癌は正常な制御から逸脱した組織であるが,癌組織においても癌種特異的な幹細胞の存在が明らかにされている。この「癌幹細胞」は組織幹細胞と同様に自己複製能を有して癌細胞を供給し,癌組織を維持する。臨床においては癌幹細胞がしばしば治療抵抗性を示すため,再発の主たる要因と考えられることであり,癌幹細胞を除去することにより再発のない治癒が期待できると考えられている。申請者らは現在,上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌マウスモデルを樹立し,発癌予防,薬剤感受性,耐性機序の解析を現在も行っている。EGFR遺伝子変異(マウスEgfr Exon 19 delE748-A752とヒトEGFR Exon 21 L858R)をそれぞれ導入した遺伝子改変マウス(♂)と野生型C57BL/6マウス(♀)により生まれた胎仔肺の器官培養、Sphere colony assayを行い、癌幹細胞の樹立を試み、樹立された細胞株を用いて表面抗原の解析、自己複製能、多分化能、腫瘍形成能、薬剤抵抗性などの機能解析を目的に本研究を開始した。今までに遺伝子改変マウスの胎仔肺を摘出し、器官培養を開始し、発癌までのプロセスを観察した。今回は胎仔肺の肺癌組織の一部を用いて培地にEGFR-TKIを添加し、腫瘍増殖が抑制できるかどうかを肉眼的に確認する、また、EGF、FGF,HGF,PIGF,VEGFなどの増殖因子をそれぞれ培地に添加し、EGFR-TKIの感受性の変化についてMTTアッセイ法やWestern Blotting法や免疫染色などを用いて検討することを予定していた。研究代表者が2度の育児休暇を取得したため、研究自体が大幅に遅れているが、今後も研究は続けていく予定である、
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