研究課題
細胞形質膜に存在し水/イオン/小分子を経上皮的に輸送する輸送体蛋白に比べ、小胞体などの細胞内膜系に存在する輸送体は、その研究手法が限られてきたことからその研究は遅れている。しかしながらヒトの病態と深く関わる事も明らかになってきており、その研究の進展は急務である。本研究では、我々が扱ってきたAQP水チャネルのうち、主として小胞体に存在し、その欠損がヒトの病態モデルとなる事が判明したチャネルについて、それらのオルガネラ機能への関与を探り、その破綻がオルガネラ/細胞/臓器機能に与える病態を解明する事を目的とする。今回主として、AQP11ノックアウ(KO)マウスが嚢胞腎を引き起こす分子メカニズムを解明した。まず、今までよい抗体がなく、不明であったAQP11の生体内および細胞内での存在部位を確定するため、AQP11にHAタグを付けたトランスジェニックマウスを作成した。このマウスとAQP11KOマウスを交配すると嚢胞腎はできなかった事から、このタグ付きAQO11が生体内で野生型のAQP11の機能を相補していることが確認された。このタグ付きAQP11は腎臓では近位尿細管の小胞体に存在する事が確認された。次に、AQP11KOマウスでの嚢胞形成機序を探るため、嚢胞腎責任遺伝子であるPKD1とPKD2の発現と細胞内分布を検討した。その結果、PKD1特異的にglycosylationが異常となっており、その結果細胞膜上のPKD1が減少していることが示された。よって、AQP11KOマウスにおける嚢胞形成はPKD1の機能低下が原因であると推定された。そこで、PKD1のヘテロKOマウス(嚢胞形成は示さない)とAQP11KOマウスを交配すると、AQP11KO単独より著明な嚢胞形成の亢進がみられた。結論として、AQP11は小胞体でその内部環境の管理に関わり、その破綻は小胞体内での特定の蛋白の修飾に異常を来す可能性がある。
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