研究課題/領域番号 |
24659414
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤中 秀彦 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤講師 (20447642)
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研究分担者 |
山本 格 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30092737)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遠位尿細管 |
研究概要 |
免疫染色による蛋白質発現データベース(DB)(The Human Protein Atlas)の利用により、腎臓内で尿細管特異的に発現する蛋白質を468個同定でき、尿プロテオームDBの併用により102個を「尿中に排泄される尿細管特異的蛋白質」と確認しえた。102個の多くは腎臓内で近位尿細管優位に発現しており、遠位尿細管優位に発現するものは22個であった。まずこれらの腎臓内遺伝子発現をRealtime PCRで検討した。ラットにUUO(片側尿管結紮による閉塞性腎症)を作成、近位~遠位までの尿細管全般の傷害を起こし、反対側と比較した。22個の遠位尿細管蛋白質のうち遺伝子発現低下はCALB1でもっとも著明で、SLC12A1も低下していた。一方GSTM3, CAPG, ANXA3の遺伝子発現は増加していた。これら22個の遺伝子発現の変動は、ラットanti-GBM腎炎腎臓でもほぼ同様の傾向で確認された。蛋白質発現はラットUUOでのCALB1の免疫染色で、遠位尿細管における染色性の著減が確認された。ラットanti-GBM腎炎とヒトIgA腎症腎臓では、とくに拡張・変形の強い遠位尿細管で染色性の低下が確認された。また尿Western blottingでラットanti-GBM腎炎と小児IgA腎症患者数名に尿中CALB1排泄低下が確認された。以上より、この研究は現時点で主に以下3点で意義と重要性があると考える:1)尿細管傷害部位を推定しうる尿バイオマーカー候補が102個に絞れたこと、2)ラットUUO腎臓のRealtime PCRにより、尿細管傷害の際に発現が変動する遺伝子をスクリーニングできること、3) ラットモデルで腎臓内遺伝子発現低下が著明だったCALB1については、遠位尿細管での蛋白質発現も著明に低下しており、ヒトとラットの腎炎で尿中排泄も低下する傾向が確認されたこと。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目の自己点検としては、実験系が確立できたことを最大に評価した。検討すべき尿バイオマーカー候補を102個に絞り込むことができた。なかでも遠位尿細管蛋白質(22個)については、まずラットUUO腎臓を用いたRealtime PCRにより、遺伝子発現が低下する群・不変群・増加する群にほぼ区分けできた。遺伝子発現が低下する群のうちもっとも変動の大きかったCALB1については、蛋白質発現も著明に低下していることがUUOの免疫染色で確認できた。また遠位尿細管傷害を有する他のラット腎疾患モデル(anti-GBM腎炎)やヒト腎疾患(小児IgA腎症)でも同様に、免疫染色での発現低下が確認できた。またラット・ヒトの尿を用いたWestern blottingでもCALB1排泄低下の傾向が確認されたことより、まずCALB1自体がよい尿バイオマーカーになりうる可能性が得られた。さらにCALB1の抗体やプライマーをよきコントロールとして、試料(腎組織および尿)や実験系のチェックに使用できることが分かった。 遺伝子発現が増加する群のGSTM3については、ヒト(小児IgA腎症患者)数名の尿のWestern blottingでも排泄増加が見られていたが、組織切片を用いた免疫染色での発現増加は明らかではなく、またラットでは使用した抗ヒト抗体で腎臓の免疫染色も尿のWestern blottingもできなかった。 その他、いくつかの近位尿細管蛋白質についても、まずはラットUUO腎臓を用いたRealtime PCRを行ない、ALDOB、RBP4の遺伝子発現低下を確認した。 AQP1(近位尿細管)、AQP2(結合管~集合管)、AQP3(集合管)はいずれもラットUUO腎臓で遺伝子発現が低下していたが、その減少程度はCALB1に及ばないことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
まず遠位尿細管蛋白質(22個)のうち、ラットUUOの検討から遺伝子発現が低下する群と増加する群として区分されたその他の蛋白質について、変動の大きかったものから順次、腎臓免疫染色を行ない、腎臓内蛋白質発現が遺伝子発現の増減と同様の傾向であることをまず確認する(ラット正常とUUO、anti-GBM腎炎、ヒト正常と腎疾患)。交差性からヒトとラットのどちらにも使用できる抗体を選ぶ。確認できた抗体につき、尿でWestern blottingを行なう(ラット、ヒト)。ヒトまたはラットのいずれかでしか使用できなかった抗体については、検討の上、別の会社のものを購入し、再度ヒトとラットでの比較検討を行なう。近位尿細管蛋白質の他のものについても、順次さらにプライマーを作成していき遠位尿細管蛋白質の場合と同様にRealtime PCRから検討を行なうが、近位尿細管優位に傷害が起こるラットモデル(ischemia reperfusion injuryまたはシスプラチン腎症)を作成して併せて検討する。これらのラットモデルにおいて、尿Western blottingでの排泄増減が腎臓内での発現増減をよく反映することが分かった蛋白質については、これが尿細管傷害の早期尿バイオマーカーとなりうる可能性を検討する。ラットanti-GBM腎炎とischemia reperfusion injuryまたはシスプラチン腎症について、発症早期から経時的に採尿し、尿Western blottingを行ない、腎組織での経時的な発現増減との関連を検討する。また血清クレアチニンの上昇や他の尿バイオマーカー(NGALやL-FABP)の変動に先立って尿中に排泄量の増減が確認できるか検討する。さらにラット、ヒトにおける腎組織切片上での尿細管傷害の程度と、尿中排泄量の関連を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラットの検討は正常、UUO、anti-GBM腎炎、ischemia reperfusion injuryまたはシスプラチン腎症について行なう。腎臓皮質から遺伝子RNAと蛋白質を抽出し、Realtime PCRとWestern blottingを行ない、遺伝子発現および蛋白質発現を定量する。また採尿し尿蛋白質をWestern blotting用に脱塩濃縮する。購入するラットの値段と動物実験施設使用料で合計60千円程度必要になる。腎臓RNA抽出からcDNA合成のための試薬類(PrimeScript)とReal-time PCR用の試薬(SYBR Premix Ex Taq)で合計150千円程度必要になる。Real-time PCRには、ラットのプライマーが次年度に約70遺伝子分、各々につきforwardとreverseで計約140プライマーが必要で合計140千円程度になる。腎臓蛋白質と尿蛋白質のWestern blotting用試薬(ECL prime)と尿蛋白質調整のための試薬(ProteoSpin)、その他消耗品で合計100千円程度になる。こうして選定された新規尿バイオマーカー候補蛋白質について抗体を購入して検討していくが、次年度に10蛋白質を検討するとして500千円程度必要になる。ヒトの腎臓と尿についても同時進行で抗体を用いた発現定量を行なっていく。そのための消耗品(試薬やチップ・チューブなど)、またラットとヒトの組織切片作成のための消耗品なども含めるとさらに50千円程度が必要となる。 さらに情報収集や研究成果発表のための学会旅費が必要で、ことに海外の学会にも積極的に参加したいと考えている(200千円程度)。以上合計で1200千円となる。
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