研究概要 |
FSP1は、糖尿病性腎症の進展とともにポドサイトでの発現が亢進する。さらに、FSP1は分泌蛋白としての生物活性も有しており、受容体はAGE受容体(RAGE)であることが報告されている。そこで、われわれはFSP1-RAGE系を介するポドサイトとメサンギウム細胞(MC)の相互作用が糖尿病性腎症の進展あるいは進展阻止に重要な役割を果たす可能性があると考えている。本年は、RAGE+/+マウス由来のMC (RAGE+/+MC)とRAGE-/-マウス由来のMC (RAGE-/-MC)に、リコンビナントマウスFSP1 (rFSP1)を10μMの濃度で添加後、12h後にtotal RNAを抽出し、cDNAアレイ解析を用いた網羅的遺伝子解析を実施した。分泌型FSP1の添加によりMCで発現誘導あるいは抑制され、かつ腎炎の進展および抑制に関連する6種類の遺伝子を新たに同定することができた。しかし、RAGEの有無によるこれら遺伝子の発現変化は認められなかった。また、分泌型FSP1により発現が誘導されることが報告されているmatrix metalloproteinases (MMP1,2,3,9,13)やosteopontinのRNA発現誘導は認められなかった。 さらに、in vivoの検討を実施するために、ストレプトゾトシン投与とhigh fat diet (HFD)投与により、マウス糖尿病性腎症モデルの作製を試みたが、有意な糸球体病変は観察されなかった。今後は、確実に糸球体病変が出現するモデルであるBTBR ob/obマウスを用い予定である。
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