研究概要 |
CD26 dipeptidyl peptidase IV(DPPIV)は腎臓や血管内皮に発現していることから、血清可溶性CD26が糸球体腎炎、血管炎及び膠原病に伴う腎障害において疾患活動性の有力なバイオマーカーとなる可能性が推測される。DPPIV阻害剤による糖尿病治療の治療効果には個体差が存在する。その原因として個体間のCD26DPPIVの酵素活性、血清可溶性CD26濃度、糖尿病性腎症及び慢性腎臓病(chronic kidney disease:以下CKD)における腎臓及び血管内皮でのCD26の発現量の低下等が推測される。東京大学医科学研究所先端医療研究センター(森本幾夫名誉教授)の協力のもとCKD患者の血清可溶性CD26濃度及びDPPIV活性を測定し、CKDにおける血清可溶性CD26及びCD26DPPIV活性比を検討した。血清可溶性CD26はCKD stage1+2群:1162±421,CKD stage 3群:1173±400,CKD stage 4+5群:1378±462(ng/ml)と3群間では有意差は認められなかった。また血清CD26DPPIV活性比はCKD stage 1+2群:19.7±3.0,CKD stage 3群:19.7±2.5,CKD stage 4+5群:19.9±3.7(nmol/min/μg)と3群間では有意差は認められなかった。血清可溶性CD26は一部の疾患においてその濃度の増減を認める事が報告されている。また血清CD26DPPIV活性も疾患によりその活性比が低下する事が報告されている。本検討ではCKD各stageにおける血清CD26DPPIV及びCD26DPPIV活性の有意差は認められなかったが、CKD各stag内における血清CD26DPPIV及びCD26DPPIV活性の増減は認められた(第55回日本腎臓学会総会にて報告)。
|