研究概要 |
根本的治療が確立されつつあるADPKDに対して、その早期診断ならびに除外診断を行うための遺伝子変異解析を、次世代シークエンサーを用いることで迅速で精度の高いものにしようとする研究である。 ADPKD患者102人の患者に対して、PKD1ならびにPKD2遺伝子領域を含むゲノムの特定領域をターゲットDNA濃縮法により選別し、「次世代シークエンサー」にてシーケンシングを行った。102人中79人にPKD1あるいはPKD2の遺伝子変異が検出され、その検出率は77.5%であり、Long range PCR法を用いた検出率約70%(J Am Soc Nephrol 23:915-33, 2012)を上回った。なお、これらの変異は、全てキャピラリー・シークエンス法で確認された。 79人の変異のうち、PKD1遺伝子変異が67人(85%)、PKD2遺伝子変異が12人(15%)に認められており、その割合はこれまでの報告と同様であった。PKD1遺伝子変異(67人)では、短絡型変異が36人(54%)であり、その内訳はナンセンス変異が18人(27%)、1~3塩基の挿入・欠失が13人(19%)、スプライシング変異が5人(7%)であった。また、非短絡型変異、すなわちミスセンス変異が31人(46%)であった。PKD2遺伝子変異(12人)では、短絡型変異が10人(83%)であり、その内訳はナンセンス変異が7人(58%)、1塩基の挿入・欠失が3人(25%)であったが、スプライシング変異は認められなかった。また、非短絡型変異、すなわちミスセンス変異が2人(17%)であった。 従来のキャピラリー・シークエンス法に比較して、短時間で結果を得ることができた。今後は、検出されなかった患者(23人、22.5%)について、検出感度の低い領域を特定し、キャピラリー・シークエンス法を行うなど、工夫を重ねていきたい。
|