研究課題/領域番号 |
24659422
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
逆瀬川 裕二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90418616)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プリオン / 複製 / 立体構造変換 / Hsp90 / インビトロ再構成系 |
研究概要 |
プリオン複製の分子メカニズムを明らかにするために、正常型プリオン蛋白質(PrPC)からその立体異性体である病原性プリオン蛋白質(PrPSc)への構造変換に必要な細胞因子を同定し、これらの細胞因子を用いたプリオン複製のインビトロ再構成系の構築を試みる。我々は、既にPrPCの分子中央部を部分変性させる細胞因子として熱ショック蛋白質Hsp90を見出しており、この蛋白質と相互作用する細胞外および細胞膜上の関連蛋白質に焦点を当ててプリオン複製に関与する細胞因子の探索を行なう。 H24年度は、1)Hsp90分子のPrPCの部分変性活性に関わる機能ドメインの同定、2)Hsp90と相互作用する細胞膜蛋白質の調製、3)Hsp90のパートナー分子である細胞膜表在蛋白質HOP/STI1の調製を行った。 1)Hsp90分子の機能ドメインの同定:マウス脳cDNAライブラリからHsp90αの構造遺伝子をクローニングし、全長(Hsp90FL)、アミノ末端断片(Hsp90N)、カルボキシ末端断片(HSP90C)をhis6タグをアミノ末端にもつリコンビナント蛋白質として大腸菌内で発現させ、複数のカラムクロマトグラフィーにて精製した。その結果、約100アミノ酸からなるHsp90C断片だけでPrPCの部分変性活性を保持することが明らかとなった。また、この過程にはATPの結合や加水分解エネルギーは必要ではなかった。 2)Hsp90と相互作用する細胞膜蛋白質の調製:細胞膜を含む膜標品をN2a細胞より調製した。この膜標品には膜結合型Hsp90が含まれることをSDS電気泳動法とイムノブロット法を用いて確認した。 3)HOP/STI1の調製:HOP/STI1をマウス脳cDNAライブラリよりクローニングし、カルボキシ末端側にhis6タグをもつリコンビナント蛋白質として大腸菌にて発現させ、複数のカラムクロマトグラフィーで精製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、1)Hsp90分子のPrPCの部分変性活性に関わる機能ドメインの同定、2)Hsp90と相互作用する細胞膜蛋白質の調製、3)Hsp90のパートナー分子である細胞膜表在蛋白質HOP/STI1の調製を行った。キー分子となるHsp90の機能ドメインが約100アミノ酸のカルボキシ末端のシャペロンドメインに集約されることが判明し、Hsp90FLと比較して容易に容易に大量調製することが可能となり、取り扱い容易になった。また、Hsp90を含む細胞膜標品やHsp90のパートナー分子候補であるHOPの調製に成功し、平成25年度以降の研究計画に必要な材料が準備できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、昨年度に調製した細胞膜抽出液からプリオン複製の分子機構に関与する細胞因子の探索を開始する。具体的には、PrPCに対して部分変性活性をもつHsp90とそのパートナー分子を、Hsp90複合体として単離、同定することを試みる。単離したHsp90複合体については、その構成蛋白質をプロテオーム解析によって同定する。Hsp90以外の分子が検出できない場合は、クロスリンク化合物の使用や細胞膜の高純度精製標品からの網羅的な解析も検討する。同定した候補分子については、抗体、阻害剤、siRNAなどを利用して、プリオン感染細胞におけるプリオン複製への影響を調べて候補分子の絞込みを行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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