研究課題/領域番号 |
24659422
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
逆瀬川 裕二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90418616)
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キーワード | プリオン / 複製 / 立体構造変換 / Hsp90 / インビトロ再構成系 |
研究概要 |
当研究課題では、プリオン複製の分子メカニズムを明らかにするために、正常型プリオン蛋白質(PrPC)からその立体構造異性体である病原性プリオン蛋白質への構造変換に必要な細胞因子を同定し、これらの細胞因子を用いたプリオン複製のインビトロ再構成系の構築を試みる。 当該年度は、マウス培養細胞より得た破砕液を出発材料としてPrPCの構造変換に直接関わる因子のスクリーニングと、プリオン複製のインビトロ再構成系の予備的な構築を行なった。その結果、リコンビナントプリオン蛋白質(rPrP)の構造変換を促進する因子として、Hsp90以外に小胞体(ER)局在するHsp90のホモログGrp94と、同じくER局在のHsp70のホモログGrp78を見出した。一方、細胞質局在のHsp70であるHsc70とHsp70はrPrPに対する構造変換活性を示さなかった。また、Hsp90、Grp94とGrp78はrPrPに対する構造変換活性に銅イオン感受性を示したが、前2者と後者ではATP反応性に違いが認められ、異なる生物学的特性をもつ可能性を示した。Hsp90については、マウス培養細胞を用いてHsp90αおよびHsp90βのsiRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験によって約40%の発現抑制を引き起こしたが、プリオン複製の大きな抑制は認められなかった。Hsp90は細胞蛋白質の~2%を占ており、十分に機能低下を起こす濃度まで発現を抑制できなかった可能性がある。一方、Hsp90の阻害剤として新規に見出したプラチナ化合物と既知のポリフェノール化合物はプリオンに持続感染した培養細胞で濃度依存的にプリオン複製を抑制した。 プリオン複製のインビトロ再構成系については、持続感染培養細胞の破砕液を用いた再構成系を構築を試みており、H26年度前半までに完成させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目標は1)プリオン複製に関わる細胞内因子候補の取得と、2)インビトロプリオン複製系の構築であったが、前者ではGrp94とGrp78という異なるシャペロン蛋白質を見出すことに成功し、後者では予定通りプリオン持続感染細胞破砕液を用いたインビトロプリオン複製系の構築に着手した。後者は、次年度のHsp90と上記細胞因子以外の補助因子の探索に必要であり、今後、重点的に力を入れていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、前半部にインビトロプリオン複製系の構築を終了し、後半部に細胞因子の特性解析と補助因子の探索、薬剤スクリーニングへの応用について検討を行う予定である。
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