研究課題
パーキンソン病(PD)および多系統萎縮症(MSA)のおける髄液中細胞外分泌顆粒(エクソソーム)のmircro RNA (miRNA)の解析および、その機能を検討する事目的とする研究である。2012年度は、コントロール3例およびパーキンソン病5例の新鮮髄液10mlからエクソソームを分離し、さらにここからmiRNAを抽出した。これらをAgilent社のマイクロアレイmiRBase ver19.0で解析。コントロールに対し優位に発現変化がみられたmiRNAが複数得られた(非公開)。パーキンソン病のエクソソーム含有miRNAに関する研究はこれまでに報告がなく、世界で初めての結果である。エクソソームに含まれるタンパク・核酸は細胞間で移動し、miRNAであれば宿主細胞において標的遺伝子の発現を調整する。パーキンソン病では、近年盛んに病的過程の神経間伝播仮説が唱えられており、これまでは主にタンパクレベルでの研究が先行しているが、むしろエクソソームのmiRNAが中心的役割を担っている可能性がある。実際に、得られたmiRNAのうちのひとつはパーキンソン病分子病理の中核となるαシヌクレインの翻訳後調節に関わるものである事がin silicoの複数のプログラムより明らかとなった。つまり、エクソソームのmiRNAによってすでに宿主細胞に豊富に存在する通常は無毒のαシヌクレインが新たに細胞毒性を獲得する可能性がある。これらはパーキンソン病の病態解明へ向けた新たな切り口であり、今後順次取り組んで行く予定である。
2: おおむね順調に進展している
マイクロアレイでパーキンソン病に関連して変動がみられた髄液エクソソームmiRNAを同定する事ができたため。
パーキンソン病において発現変化の程度が著しかったmiRNAに注目し、以降多数例のコントロールおよびパーキンソン病患者髄液エクソソームにおいて解析を継続する。具体的には、miRNAに対して特異的なプローブを作製し半定量的解析を行い、パーキンソン病の臨床型やステージによる発現変化について検討していく。また、変動のみられたmiRNAの中には、in silicoの塩基配列解析よりパーキンソン病分子病態の中核となるαシヌクレインの翻訳後修飾に関わるタンパク発現調整を行うmiRNAが含まれており、このmiRNAの発現コンストラクトを委託作製。さらに、これを実験細胞に発現させ、αシヌクレインのタンパク発現変化を観察する。
主に、エクソソーム抽出キット、miRNAに対するプローブの作製、およびmiRNA発現コンストラクト作製、研究成果の学会発表に研究費を使用する予定である。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)
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