申請者は生体において不活性物質である糖誘導体化合物の末梢体内への投与により、脳内プリオン増殖が抑制され、ほぼ一生涯にわたり発症が阻止されること、さらに投与マウスの仔マウスでも脳内プリオン増殖抑制が起こることを発見した。このプリオン増殖抑制機序には、マクロファージ系細胞に関連する液性因子群が働いている。申請者は、長期間かつ世代を超えるプリオン増殖阻止現象に、液性因子群によるエピジェンテックなクロマチン修飾が関与していると考えている。本申請研究では、糖誘導体化合物投与マウスおよび仔マウスのプリオン易障害性脳領域の染色体DNAのゲノムワイドなエピゲノム修飾を解析し、この仮説を調べた。糖誘導体化合物をマウスに単回皮下投与後の2年間にわたり経時的に採取した脳組織と、糖誘導体化合物を単回皮下投与後に妊娠させ得られた仔マウスの生後経時的に採取した脳組織と、未投与の対照群の脳組織を用いて、高密度メチル化領域をメチル化DNA免疫沈降(MeDIP)法+プロモーターアレイで解析しメチル化マッピングを行った。また、同じ脳組織材料を用いて、各種の化学修飾特異的かつヒストンバリアント特異的な抗ヒストン抗体を用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)法+プロモーターアレイ解析によるヒストン修飾マッピングを行った。さらに、同じ脳組織材料を用いてDNAマイクロアレイ解析で遺伝子発現プロファイリングを行った。これらの結果を相互に照らし合わせて、バイオインフォーマティクス解析により有意な候補遺伝子を多数抽出した。各候補遺伝子について、定量的PCRとウエスタンブロットで発現を確認中である。
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