研究課題/領域番号 |
24659426
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
下畑 享良 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (60361911)
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研究分担者 |
高橋 哲哉 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (20515663)
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 室長 (50185013)
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部・病理室, 室長 (20416564)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | メチル水銀中毒 / VEGF / 小脳 / ラット / 血液脳関門 |
研究概要 |
【目的】メチル水銀中毒による中枢神経障害の病態メカニズムは明らかでない.水俣病の剖検脳において浮腫や点状出血が神経細胞死の強い部位で見られており,血液脳関門(BBB)の破綻が神経障害に関連する可能性がある.血管内皮細胞成長因子(VEGF)の発現亢進はBBBの破綻を引き起こすが,近年.in vitroの実験系においてメチル水銀によるVEGFの発現亢進が報告された.ラットメチル水銀亜急性中毒モデルにおける水銀投与によるVEGFの発現の変化を検討する. 【方法】6週齢の雄性Wister ratを,20 ppmメチル水銀水に曝露し,4週間後に脳を採取し解析した.小脳を分離し,大脳は長軸方向で3分割し,前方から前頭部・中央部・後頭部とした.メチル水銀投与群・非投与群のそれぞれの部位について,ウエスタンブロット法によるVEGFの発現を確認した.さらに免疫組織化学にて,VEGF,RECA1(血管内皮細胞マーカー),GFAP(アストロサイトマーカー)の発現パターンを検討した. 【結果】ウエスタンブロット法では,メチル水銀投与群は非投与群に比較して小脳でVEGFの発現が亢進している傾向を示したが,有意差は見られなかった.前頭部,後頭部でのVEGF発現に非投与群との差は見られなかった.しかし,免疫組織化学では投与群の小脳でVEGFの発現亢進がみられた.局在の検討では,この多くはGFAP陽性細胞と一致しており,RECA1陽性細胞とは一致していなかった. 【結論】ラットへの4週間メチル水銀投与により,小脳においてVEGFの発現亢進が認められた.発現亢進はアストロサイトで主に認められた.メチル水銀投与によるVEGF発現の亢進が血液脳関門の破綻を引き起こし,神経障害に関わる可能性が示唆された.VEGF抑制療法が有望であるものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り研究目標は達成できており,このペースで次年度の研究を継続する.
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今後の研究の推進方策 |
ラットメチル水銀亜急性中毒モデルに対し,VEGF抑制療法,具体的には抗VEGF中和抗体や特異的VEGF受容体阻害剤(SU1498)が有効であるか確認する. まず,抗VEGF中和抗体(RB222)の有効性の評価を行う.ラットメチル水銀亜急性中毒モデルを用いる.6週令のWistarラット雄に対し,メチル水銀飲水暴露(4週間)の開始時点に,すでに脳虚血においてVEGFの中和作用を確認してるRB222を静脈投与する.4週間後に神経症状(後脚の運動機能異常),小脳顆粒細胞に対するTUNELアッセイ(血管透過性,微小出血),VEGFシグナルカスケードへの影響を確認する. 次にVEGF受容体阻害剤(SU1498)の有効性の評価を行う.上記と同様の検討をVEGF受容体阻害剤(SU1498)に変えて行う.効果判定は「ARRIVE ガイドライン」を参考に行う.具体的には飼育,ランダム化,サンプルサイズ,アウトカム評価,有害事象の項目に留意して実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
Wisterラット購入費用,VEGF抑制薬(抗VEGF中和抗体や特異的VEGF受容体阻害剤),その他,免疫染色,ウエスタンブロット試薬等を購入する.また旅費や論文投稿費用を支出する.
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