研究課題/領域番号 |
24659426
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
下畑 享良 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (60361911)
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研究分担者 |
高橋 哲哉 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (20515663)
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 室長 (50185013)
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部・病理室, 室長 (20416564)
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キーワード | 水俣病 / メチル水銀中毒 / 血管内皮細胞増殖因子 / 血液脳関門 |
研究概要 |
水俣病,新潟水俣病で知られるメチル水銀中毒に伴う神経障害の機序を,「微小血管障害」という新しい観点から検討した.具体的には強力な血管透過性亢進作用をもち「微小血管障害」を引き起こす血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に注目し,メチル水銀中毒に特徴的な中枢神経病変分布がVEGFシグナルカスケードの活性化により説明が可能か,さらにVEGFがメチル水銀中毒に対する新規治療標的分子となるかを明らかにすることを目的とした.まず,6週令のWistarラットの雄に対し,メチル水銀飲水曝露 (20 ppmのメチル水銀水)を4週間行い,10週令で解剖を行った.摘出した脳試料の半分は灌流固定し,ホルマリン固定,パラフィン切片および水銀含量測定用に使用した.一方の半分は灌流固定なしで組織を凍結保存し,生化学測定および凍結切片に用いた.ラットへの4週間メチル水銀投与により、小脳においてVEGFの発現亢進が認められた。発現亢進はアストロサイトで主に認められた。またBBB構成タンパクの中で,RECA-1発現の低下と,IgG経静脈投与後のBBBからの漏出が認められた.メチル水銀中毒の病態として,VEGF発現の亢進がBBBの破綻を引き起こし,神経障害に関わる可能性が示唆された.つぎに抗ラットVEGF中和抗体(RB222)を経静脈的に投与したところ,コントロール抗体(IgG)と比較し,運動機能の改善の傾向を認めた.この結果はメチル水銀亜急性中毒に対し,VEGF抑制療法がBBB破綻を緩和し,神経障害を抑制した可能性を示唆する.今後,VEGF抑制療法がメチル水銀中毒に伴う神経障害を緩和するか,種々のモデルで検討を行う必要がある.
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