研究課題
シナプスは神経変性疾患において最も早期に障害される部位であり、運動ニューロン疾患においても、神経と筋を連結するシナプスである神経筋接合部が初期病変の主座である可能性が示されているが、その分子病態は解明されていない。本研究では、運動ニューロン疾患のひとつである球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のマウスモデルを用い、神経筋接合部の超微形態解析・遺伝子発現解析を行い、初期病態の分子メカニズムを解明するとともに、運動による神経筋クロストークの変化を解析し活動依存性の分子病態を明らかにする。本年度は免疫組織化学とマイクロアレイ解析による病態解明を行った。その結果、SBMAマウス骨格筋(前脛骨筋)の神経筋接合部では6週齢(神経症状の発症前)から脱神経がみられ、進行とともに悪化する傾向が得られた。また、6週齢のSBMAマウス前脛骨筋の神経筋接合部をacetylthiocholineで染色し、レーザーマイクロダイセクションを用いて神経筋接合部を単離し、Ovation Pico WTA System V2によりランダムプライマーを用いて増幅し、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。その結果、TGF-beta receptor, type I/II extracellular region , regulation of insulin-like growth factor receptor signaling pathwayなどの機能を有する分子の発現が亢進し、calcium ion binding, metal ion bindingなどの機能を有する分子の発現が低下していた。今後定量RT-PCRや免疫組織化学を用いてデータのバリデーションを進めるとともに、進行期(13週齢)のマウスについても解析を進め、運動負荷による変化についても検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では神経筋接合部の初期病態の分子メカニズムを解明することを目的としており、発症前のSBMAマウス神経筋接合部の網羅的遺伝子発現解析の結果が得られたことから、順調に進展していると自己評価した。
今後はマイクロアレイの結果を定量RT-PCRや免疫染色で確認するとともに、神経変性の進行に伴う神経筋接合部の遺伝子発現変化を検討する。また、発症前から発現が変化している分子の病態への関与を神経系細胞と筋細胞の共培養システムを用いて解析するとともに、SBMAマウスに強制運動負荷や下肢固定などの介入を行い、発症前および発症後の運動や安静が神経筋接合部の病変に及ぼす影響を病理学的・生化学的に明らかにする。
該当なし
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