研究課題
申請者は運動神経細胞(NSC34細胞)にレンチウィルスを用いてeroGFPを恒常的に発現する細胞を用いて一過性小胞体ストレス(thapsigargin、tunicamycinなどの薬剤、glucose deprivationなど)で励起波長比が変化することを確認した。これまでに酵母を用いた系では小胞体内の酸化・還元のシステムが小胞体内の折りたたみ以上タンパク質の増加にともなって、酸化状態から還元状態に大きく変化することが報告されている。我々が用いた哺乳類細胞でも一過性小胞体ストレスによりそれは再現性を持って確認できたが、酵母の系と比較すると極めて変化が軽微であった。このことは、哺乳類細胞の小胞体内は酸化状態にシフトするようなメカニズムが恒常的に機能しており、酵母の小胞体のように単純にタンパク質のS-S結合の量の変化が直接酸化還元状態に反映しているわけでないことを示唆している。このため、基礎的なメカニズムを明らかにすることを第一に考え研究を進めたところ、小胞体膜上のBaxに依存的な小胞体膜の透過性が哺乳類細胞小胞体における酸化状態の恒常性維持に重要であることを見出した。
3: やや遅れている
概要に記したように、哺乳類細胞の小胞体の酸化還元状態は酵母の小胞体とは異なって、酸化状態を維持する恒常性が機能していることが、わかった。この機構を明らかにしないことには、当初目的である神経変性疾患などにおける小胞体ストレスを効率よく直接モニターすることが難しい。このために、この恒常性維持について詳細を明らかにすることを優先した。また、小胞体ストレスのモニターの対象として、既存の変異SOD1マウスモデルは既に非常に多くの報告があること、実際のALSとしてはそのメカニズムがやや特異であることから、同時に独自の神経変性疾患モデル(ALSモデル)の構築が必要であると判断し、家族性・孤発性の両者に非常に密接であると考えられるようになったRNA結合タンパク質のひとつであるFUSのノックダウンモデルマウスの構築を進めている。以上の理由から研究計画はやや遅れている。
前年度で明らかになった小胞体膜上のBaxに依存的な小胞体膜の透過性が小胞体ストレスで変化する機構をeroGFPを恒常的に発現する細胞を用いて明らかにし、論文化を急ぐ。判明したメカニズムをもとに、異常タンパク質の小胞体内での蓄積をより鋭敏に完治できるシステムの構築を図る。同時に、独自の神経変性疾患モデル(ALSモデル)の構築(FUSのノックダウンモデルマウス)を行い、そこにeroGFPを発現させることで小胞体ストレスモニタリングが可能になるかを検討する。
primary neuronとレンチウィルスを作成維持するための諸費用。動物実験に関わる諸費用。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Sci Rep.
巻: 2 ページ: 529
10.1038/srep00529.
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巻: 16 ページ: 265-73
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