研究課題/領域番号 |
24659430
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水野 哲也 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70335008)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ミクログリア / IL-34 / TGF / 神経保護作用 |
研究概要 |
脳内の免疫機能を受け持つミクログリアは,神経障害作用と神経保護作用との2面性を有し、種々の神経変性疾患、炎症性脱髄疾患において慢性炎症の主体となり神経障害性に作用する一方で、炎症を伴わない貪食作用、抗酸化酵素・抗炎症性サイトカイン・神経栄養因子産生により神経保護作用を発揮する。本研究において、制御性ミクログリアというべき神経保護作用を有するミクログリアの分化誘導法を検討した。ミクログリアの増殖分化誘導作用を有するIL-34を主として、抗炎症性サイトカインであるIL-10、TGF-betaを加え7日間培養を行った。またIL-34存在下で5日間培養し、さらに24時間 CpGを添加する方法も検討した。対照群として同様の増殖分化作用を持つM-CSFおよび炎症を惹起するLPS、GM-CSF群とを比較した。 その結果、IL-34+TGF群においては、炎症反応を惹起することもなく、過度の増殖も抑制され、神経細胞との共培養系においてアミロイド蛋白神経毒性に対して神経保護作用を示した。IL-34+TGF+IL-10群は増殖抑制が強く十分な神経保護作用は得られなかった。IL-34+CpG 群も神経保護作用が認められたが、IL-34+TGF群ほどの作用は得られなかった。M-CSF+TGF群はIL-34+TGF群ほど神経保護作用は認められなかった。LPS群、GM-CSF群は炎症反応が強く神経細胞に対し障害性に作用した。現在、FACS解析により制御性ミクログリアの表面抗原の解析、および制御性ミクログリアの細胞内シグナルについて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御性ミクログリアの分化誘導法を確立するために、各種サイトカイン(IL-34、IL-10、IL-27、IL-37、TGF-beta) ケモカイン(CCL-2、CCL-3、CCL-21、CX3CL-1) 神経栄養因子(BDNF、GDNF、NT-3)等により検討を行い、IL-34+TGF 7日間投与が有用であることを見出した。さらに、IL-34+TGF 誘導制御性ミクログリアの細胞表面解析、細胞内シグナルの解析も進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
制御性ミクログリア分化誘導因子IL-34、TGFを脳内の目的部位に送達する方法として、ナノカプセルに分化誘導因子を充填し、ナノカプセル表面上にミクログリアが認識できる貪食受容体のリガンドを付与することや、ミクログリアのトランスサイトーシスによる脳血液関門通過能を利用してあらかじめ制御性ミクログリアに分化誘導したミクログリアを経動脈的に投与する方法などを検討する。In vitroでは、トランスウェルのポリカーボネート膜上面に脳血管内皮細胞を培養した薬物脳内移行性モデルを用いて、このバイオナノカプセルの移行性を検討する。In vivoでは、バイオナノカプセルを蛍光標識した後、正常マウスに経静脈および経動脈投与し、1日、5日、10日後に、組織標本の免疫染色により、脳移行性と制御性ミクログリアの誘導の有無を検討する。その有効性を確認した後、アルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1トランスジェニックマウス)、筋萎縮性側索硬化症モデルマウス(変異SOD1マウス)、多発性硬化症モデルマウス(実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)発症マウス)に経静脈および経動脈投与し、制御性ミクログリアの誘導による病態改善効果について行動実験(新奇物質探索試験、恐怖条件づけ学習試験、モーリス水迷路試験)、病理学的解析によって検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
In vivo 実験における抗体リコンビナント蛋白、試薬に600千円、動物飼育に200千円、 学会発表に100千円、論文投稿、校正に100千円を予定する。
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