研究概要 |
脳内の免疫機能を受け持つミクログリアは,神経障害作用と神経保護作用との2面性を有し、種々の神経変性疾患、炎症性脱髄疾患において慢性炎症の主体となり神経障害性に作用する一方で、炎症を伴わない貪食作用、抗酸化酵素・抗炎症性サイトカイン・神経栄養因子産生により神経保護作用を発揮する。 本研究において、制御性ミクログリアというべき神経保護作用を有するミクログリアの分化誘導法を検討した。ミクログリアの増殖分化誘導作用を有するIL-34を主として、抗炎症性サイトカインであるIL-10、TGF-betaを加え7日間培養を行った。またIL-34存在下で5日間培養し、さらに24時間 CpGを添加する方法も検討した。対照群として同様の増殖分化作用を持つM-CSFおよび炎症を惹起するLPS、GM-CSF群とを比較した。 その結果、IL-34+TGF群においては、炎症反応を惹起することもなく、過度の増殖も抑制され、神経細胞との共培養系においてアミロイド蛋白神経毒性に対して神経保護作用を示した。IL-34+TGF+IL-10群は増殖抑制が強く十分な神経保護作用は得られなかった。IL-34+CpG 群も神経保護作用が認められたが、IL-34+TGF群ほどの作用は得られなかった。M-CSF+TGF群はIL-34+TGF群ほど神経保護作用は認められなかった。LPS群、GM-CSF群は炎症反応が強く神経細胞に対し障害性に作用した。 さらに、IL-34、TGF処置をしたミクログリアは、ポリカーボネート膜上面に脳血管内皮細胞を培養した薬物脳内移行性モデルにおいて、移行性および神経保護作用が認められた。
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