研究課題
昨年度は、申請者らのイントロン変異タウTgマウスの解析を行い、12カ月齢以降のマウスをタウのドナーとして用いることを決定した。今年度は、マウスの脳にマイクロダイアリシスをセットし、実際にタウが細胞外に分泌されているかどうかをELISAで測定した。その結果、回収された脳還流液中にタウが検出されたが、その値は徐々に低下し、神経活動に伴ってタウが定常的に分泌されていることを示すデータは今のところ得られていない。また、その値の下降の様子から、最初に測定されたタウは手術による脳傷害の結果放出されたものであろうと考えられた。タウ分泌量の低さはおそらく、我々が用いたマウスのタウ発現量の低さや病理の進行の遅さに由来すると考えられる。そこで今年度は、若干テーマからはずれるが、より早期からAβとタウの両方の病理を呈するモデルの作製に注力した。申請者らのE693Δ変異APP-Tgマウスとイントロン変異タウTgマウスを交配し、経時的に病理を観察したところ、生まれたマウスは4カ月齢でAβオリゴマーの蓄積とタウの異常リン酸化、シナプス消失を示した。これらの病理は親のAPP-Tgマウスでは8カ月齢から見られるもので、APPとタウの共発現により病理が早まることが示された。次に、E693Δ変異APP-Tgマウスと野生型タウTgマウスとを交配し同様の実験を行った。生まれたマウスは6カ月齢でAβオリゴマーの蓄積とタウの異常リン酸化、シナプス消失、記憶障害を示し、18カ月齢で神経原線維変化とニューロン消失を示した。この結果は、タウの変異がなくても、Aβオリゴマーとヒトタウがあればアルツハイマー病の3大病理変化、すなわちAβの蓄積(通常は老人斑の形成)、神経原線維変化、ニューロン消失を再現できることを示している(論文発表済み)。今後は、このより完全なモデルマウスを用いて病理の伝播実験を行っていく予定である。
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http://www.med.osaka-cu.ac.jp/Neurosci/news.html