研究課題
1) HeLa細胞にPINK1/parkin介在性マイトファジーを、PINK1、parkinを2:1の比率で強制発現することにより誘導できることを確認し、同条件下においてミトコンドリアの再生過程を免疫組織学的に検討した。強制発現24時間後にはミトコンドリアの核周囲への集積を認めた。48時間後には、細胞内に殆どミトコンドリアを持たないと考えられる(MitoTracker-Red陰性・Tom20陰性)細胞が30%程度認められた。しかし72時間後にはミトコンドリアの断片的な再生が核周囲から始まっていることを確認した。2) 上記の条件でPINK1/parkin介在性マイトファジーを強制誘導し、48時間後に生じるミトコンドリアが著しく減少した細胞の中には、細胞死が誘導されるものが認められたため、その詳細を検討した。PINK1、parkin強制発現48時間後にAnnexin V-Alexa594染色を行い、フローサイトメーターにて評価したところ、著明なアポトーシス誘導を認めた。さらにウェスタンブロッティングにて有意なcleaved caspase-3上昇を認めた。同細胞死は、zVAD添加により著明に抑制された。3) ミトコンドリア再生機構を検討すべく、フローサイトメーターにてミトコンドリア減少細胞を抽出を試みた。PINK1、parkin強制発現48時間後に、100 nM MitoTracker-Red CMXRosにて染色したところ、細胞死陰性・MitoTracker陰性細胞をFACSAriaにて抽出し、ミトコンドリア発現量が著しく低下していることを確認した。同細胞群を、現在cDNAマクロアレイにて評価している。
2: おおむね順調に進展している
ミトコンドリアターンオーバーが亢進した細胞群を適切に抽出するため、まずPINK1/parkin介在性マイトファジー誘導により細胞死が増加することを確認し、死に向かう細胞群を適切に除外することが必要と考えられたため、追加の実験を必要としたため、当初の研究計画を修正した。同細胞群がアポトーシスを呈することをpropidium iodide染色・Annexin V染色を用いて突き止め、さらにWestern blottingによってアポトーシス経路の確認を行った。さらにAnnexin V-Alexa594を用いたフローサイトメーターにより、同細胞群を除外できることを確認した。同細胞群をsorting outしたのちの網羅的解析の方法が問題となるが、当初の予定通り、cDNAマイクロアレイを用いて行うと同時に、新たなるnon-coding RNA研究者の協力を得て、コピー数の増加する遺伝子をシステムズバイオロジーを用いて同定するべく新たな方法を加えたいと考えている。現時点での予定では、原因遺伝子の同定を2013年8月までに終え、同遺伝子(群)をクローニングし、培養細胞レベルでの再検証を行う予定である。
1) cDNAマイクロアレイによるデータ収集並びに同データのシステムズバイオロジーを用いた再評価。現在sorting outした細胞群について、cDNAマイクロアレイによるデータ解析を進めている。核DNAおよびミトコンドリアDNAのなかで、ミトコンドリア再生に中核的な役割を持つものを同定する。2) mRNA抽出後、直接的に発現量をCAGE法にて評価し、発現コントロールを行うプロモーター遺伝子などの同定を図る。3) 1-2にて同定された遺伝子機能を培養細胞に過剰発現・ノックダウンすることにより評価する。
マイクロアレイ費用: 150万円、解析にかかる費用: 50万円、mRNA直接抽出にかかわる費用: 20万円、培養細胞関連にかかわる費用:約140万円、その他費用: 約10万円を計上する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
FEBS Lett
巻: 587 ページ: 1316-1325
10.1016/j.febslet.2013.02.046.
J Neurol Neurosurg Psychiat
巻: 83 ページ: 430-436
10.1136/jnnp-2011-301205.