研究概要 |
【目的】Elovl6 (Elongation of very long chain fatty acids family member 6) は炭素数12-16の飽和および一価不飽和脂肪酸を基質とし、炭素数18の長鎖脂肪酸の合成を行う脂肪酸伸長酵素である。近年、脳において脂肪酸が摂食制御に重要な役割を担うことが明らかになってきた。そこで本研究では、Elovl6欠損マウスを用いて摂食調節機構におけるElovl6の役割について検討した。 【方法】野生型マウスおよびElovl6欠損マウスを用い、普通食、高ショ糖食(ショ糖70Kcal%,重量比70%)、高脂肪食(主にラード60Kcal%,重量比35%)を単独または選択条件で与え、その摂食パターンと摂食量を経時的に観察した。 【結果】野生型と比較して、Elovl6欠損マウスは普通食および高脂肪食の摂食量は変わらなかったが、高ショ糖食では摂食量が有意に増加した。また、普通食と高ショ糖食を同時に与えて餌を選択させた場合、普通食と高ショ糖食を合わせた総摂食量は野生型マウスとElovl6欠損マウスで同等であるが、Elovl6欠損マウスは高ショ糖食をより多く摂食し、普通食の摂食量が減少した。 【結論】Elovl6による脂肪酸組成の変化は、恒常性維持のための摂食(homeostatic eating)には影響せず、ショ糖のような嗜好性に基づいた摂食(hedonic eating)に影響をおよぼす可能性が示唆された。現在、Elovl6欠損マウスショ糖における嗜好性亢進の脳内メカニズムについて解析を進めている。
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