研究課題/領域番号 |
24659445
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浅野 知一郎 広島大学, その他の研究科, 教授 (70242063)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / 肥満 / 代謝調節 / インスリン抵抗性 |
研究概要 |
脂肪細胞分化の制御はPPARγやC/EBPsを中心とした転写因子の発現誘導を介することが広く理解されている。今回、我々は、INTS6をノックダウンした場合に脂肪細胞への分化がほぼ完全に抑制されるという現象を発見した。驚いたことに、INTS6がノックダウンされ、脂肪分化能力が損なわれた細胞でも分化誘導に伴うPPARγ、C/EBPβのタンパク発現誘導能は完全に正常に保たれていた。この結果は、脂肪分化の中心的イベントと考えられていたPPARγ、C/EBPの発現上昇以降の過程においても、分化制御機構が存在していることを意味している。すなわち、全く未解明の機構でINTS6が脂肪細胞分化を調節しているものと考えられる。本課題では、その分子機構を細胞レベルのみならず遺伝子欠損マウスを用いて解明し、最終的には肥満治療への応用を探索することを目的とする。I. INTS6によって調節される脂肪細胞分化関連遺伝子の発現及びスプライシング変化の同定。II.INTS6 siRNAで処理、あるいは、INTS6を過剰発現させた3T3-L1細胞をを調整し、脂肪細胞分化へのメカニズムを検討する。III.脂肪細胞内INTS6結合タンパクの網羅的同定。MEFタグとLC/MS/MSを駆使したシステムを用いて、INTS6と複合体を形成するタンパクを網羅的に同定し、この中に脂肪細胞の分化に重要なタンパクが含まれていないかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
INTS6は以前、DICE1と名付けられていたが、これが多くの癌細胞で欠損していることが知られている。INTS6はsmall nuclear RNAのプロセッシングに関与するIntegrator complexと呼ばれる蛋白複合体のサブユニットの一つであった。INTS6の発現量は、3T3-L1脂肪細胞の分化に応じて一過性に上昇することが認められた。そこで、siRNAを用いてINTS6のノックダウンしたところ、脂肪滴形成及びFABP等の脂肪分化マーカーの発現が顕著に抑制された。また、C/EBPとPPARの発現量も減少していた。他のサブユニットであるINTS11のノックダウンにおいても、同様の脂肪分化の抑制が認められた。以上の結果より、Integrator complexは脂肪分化に際して一過性に発現が増加し、分化誘導に重要な役割を果たしていることが証明された。
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今後の研究の推進方策 |
INTSの臓器特異的KOマウスの作成。INTS6の生体全体における役割を解明するためには、INTS6のconditionalKOマウスを樹立する必要がある。そこで、現在、理化学研究所の変異マウスユニットとの共同作業として、Cre-loxPシステムを用いた臓器特異的INTS6 KOマウスを作成中である。樹立したKOマウスを、脂肪細胞特異的Cre発現マウスと交配させることによって、脂肪細胞特異的なINTS6 KOマウスを作成する。脂肪細胞特異的なINTS6 KOマウスには、通常食や高脂肪食負荷を行い、脂肪細胞の数、サイズを定量すると共に、全身的な代謝やインスリン感受性における影響を詳細に検討する。 さらに、Integrator complexによるsnRNAの量的、質的変化が脂肪細胞分化にどのような役割を果たしているかについても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞系の実験に用いる消耗品代。 マウスや抗体作成用ウサギの飼育代 など
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