ヒト褐色脂肪細胞が産生する新規分泌たんぱくの機能解明

2012 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 24659447
• 研究種目: 挑戦的萌芽研究
• 配分区分: 基金
• 研究分野: 代謝学
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 松田 修 京都府立医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00271164)
• 連携研究者: 川人 豊 京都府立医科大学, 医学研究科, 准教授 (50336731)
• 研究期間 (年度): 2012
• キーワード: 細胞分化 / 再生医療

研究概要

褐色脂肪細胞は、白色脂肪細胞とは対照的に、余剰エネルギーを放散し非震え熱産生に寄与する細胞である。しかしながら、ヒト成人における褐色脂肪細胞の存在は最近まで分かっておらず、 ヒトの褐色脂肪細胞の機能と役割には未解明の部分が多い。また、褐色脂肪細胞が何らかの液性因子を産生し、それらが全身的な代謝調節にどのような役割を担っているかについては、これまでほとんど明らかにされていない。本研究では褐色脂肪細胞が産生する液性因子の解析とその機能解析を目的として行った。DNA マイクロアレイ解析を行って、ヒト褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞との遺伝子発現プロファイルをゲノムワイドに解析した結果、褐色脂肪細胞が選択的に産生し、細胞外に分泌されると予想されるいくつかのたんぱくを見出した。これらたんぱくに FLAG を融合させたキメラたんぱくの遺伝子を構築し、 電気穿孔法で培養細胞株に導入した。抗 FLAG 抗体を用いたウェスタンブロットにて解析した結果、培養細胞株のライセートに FLAG 融合たんぱくの発現が認められた。他方で、RNA interference によって UCP1 をノックダウンしたヒト褐色脂肪細胞を作成し、種々のアッセイに供したところ、UCP1 を発現する褐色脂肪細胞よりは低いものの、 一部の機能については発揮されることが示唆され、さらにこれらは液性因子を介する可能性が考えられた。したがって、褐色脂肪細胞は全身的に作用する液性因子を分泌することで、 UCP1 非依存性の機能を果たしている可能性が示唆された。本研究の成果は、糖尿病やメタボリック症候群の理解と制御に結びつく可能性が期待できる。

研究成果

• [雑誌論文] Myostatin acts as an autocrine/paracrine negative regulator in myoblast differentiation from human induced pluripotent stem cells (2013)
  • 著者名/発表者名: Gao F, Kishida T, Ejima A, Gojo S & Mazda O*.
  • 雑誌名: Biochem. Biophys. Res. Commun. 巻: 431 (2) ページ: 309-14
  • DOI: doi:10.1016/j.bbrc.2012.12.105
  • 査読あり
• [雑誌論文] In vivo gene transfer using pDNA/chitosan/chondroitin sulfate ternary complexes: Influence of chondroitin sulfate on the stability of freeze-dried complexes and transgene expression in vivo (2013)
  • 著者名/発表者名: Hagiwara K, Kishimoto S, Ishihara M, Koyama Y, Mazda O, & Sato T
  • 雑誌名: J Gene Med 巻: 15(2) ページ: 83-92
  • DOI: doi:10.1002/jgm.2694
  • 査読あり
• [雑誌論文] Mild electrical stimulation with heat stimulation increase heat shock protein 70 in articular chondrocyte (2013)
  • 著者名/発表者名: Hiraoka N, Arai Y, Takahashi KA, Mazda O, Kishida T, Honjo K, Tsuchida S, Inoue H, Morino S, Suico MA, Kai H, & Kubo T
  • 雑誌名: J Orthop Res 巻: 31(6) ページ: 894-900
  • DOI: doi:10.1002/jor.22307. Epub 2013 Jan 17
  • 査読あり
• [雑誌論文] Lansoprazole Inhibits Nitric Oxide and Prostaglandin E(2) Production in Murine Macrophage RAW 264.7 Cells (2012)
  • 著者名/発表者名: Nakagawa S, Arai Y*, Kishida T, Hiraoka N, Tsuchida S, Inoue H, Sakai R, Mazda O, & Kubo T
  • 雑誌名: Inflammation. 巻: 35(3) ページ: 1062-8
  • DOI: doi:10.1007/s10753-011-9412-7
  • 査読あり
• [雑誌論文] Silencing the expression of connexin 43 decreases inflammation and joint destruction in experimental arthritis (2012)
  • 著者名/発表者名: Tsuchida S, Arai Y, Kishida T, Takahashi K, Honjo K, Terauchi R, Inoue H, Oda R, Mazda O, & Kubo T
  • 巻: 31(4)
  • ページ: 525-30
  • DOI: doi:10.1002/jor.22263. Epub 2012 Nov 19
  • 査読あり
• [産業財産権] 褐色脂肪細胞及びその調製方法 (2012)
  • 発明者名: 岸田綱郎、松田 修
  • 権利者名: 京都府公立大学法人
  • 産業財産権番号: 特願 2012-156066
  • 出願年月日: 2012-07-12