研究課題
挑戦的萌芽研究
グルカゴン遺伝子にコードされるプログルカゴンを前駆体として膵島α細胞ではグルカゴン、腸管L細胞ではGLP-1など多様なペプチドが産生される。我々自身が作成したグルカゴン遺伝子-GFPノックインマウスのホモ接合体(GCGKO)はプログルカゴンに由来するペプチド全てを欠損する唯一の動物モデルで、糖尿病の病態や糖・エネルギー代謝の調節機構の解析において有用である。本研究では、まずプログルカゴン由来ペプチドが熱産生や褐色脂肪組織の機能を制御する可能性を検証するために、GCGKOおよび対照群の酸素消費量・二酸化炭素産生・運動量を包括的実験動物モニタリングシステム(Comprehensive Laboratory Animal Monitoring System:CLAMS)により解析した。また両群に高脂肪症を負荷して肥満とし同様の解析を行った。さらに代謝状態を評価した後、採血した上で褐色脂肪・白色脂肪・肝臓組織を摘出してRNAを抽出した。これら検体において遺伝子発現を定量PCR法により、寒冷暴露により発現制御を受ける遺伝子・交感神経系関連遺伝子・脂質代謝関連遺伝子・ミトコンドリア機能関連遺伝子・ニコチンアミド代謝関連遺伝子・サーチュイン関連遺伝子の発現解析を進めている。この解析よりグルカゴンが褐色脂肪の機能である熱産生の制御において果たす役割を解析する上で基礎となるデータを取得することができると考えられる。これまでの解析から常温における酸素消費等では大きな違いが認められないことが明らかとなったため、寒冷曝露により酸素消費が増加するか、そして寒冷曝露に対する反応においてGCGKOと対照群の間で差が認められるか予備的解析を現在進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初平成24年度の研究計画として予定した動物実験・検体の採取は予定通り進んでいる。常温下の実験では明らかな差が見られなかったため、当初計画では平成25年度に行う予定であった寒冷曝露実験にすでに着手している。培養細胞を用いた実験は予備的検討程度しか行っていないが、総合的には概ね順調に進んでいると考える。
褐色脂肪機能の動的な変化に重点をおいて解析を進めるため、現在着手している寒冷曝露実験を中心に実験を進める。実験動物としてマウスを用いる一方で、培養褐色脂肪細胞実験はラットの細胞を用いているため、その妥当性(マウス・ラット間の種を越えた再現性)については慎重に考察して実験を進めたい。
遺伝子発現解析のための試薬類をはじめとする消耗品、動物飼育施設・解析機器の使用料、さらに情報収集のための国内学会出張一回の旅費を予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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