研究課題
グルカゴンはグリコーゲンのほかにタンパク質や脂質の分解も促進し、アミノ酸やグリセロールを原料とした糖新生を促進し、ブドウ糖を調達する。本研究では、このグルカゴンによるブドウ糖=エネルギーの調達が、個体が寒冷に曝露された際の熱産生において果たす役割を検討してきた。我々自身が作成したグルカゴン遺伝子-GFPノックインマウスのホモ接合体(GCGKO)はグルカゴンを欠損する。これまでにGCGKOを寒冷環境におくと対照群よりも体温の低下が著しいことを見出してきた。さらに、このGCGKOの寒冷不耐性が、2週間にわたるグルカゴン補充により、改善することを確認した。GCGKOの褐色脂肪組織においては熱産生に関わる脱共役タンパク質-1や甲状腺ホルモンの活性化に関わる2型脱ヨード酵素の発現が低下しており、寒冷曝露による発現誘導も対照群に比べて減弱していた。褐色脂肪組織の交感神経系を介した刺激にはβ3受容体が関与しているが、GCGKOの褐色脂肪組織ではβ3アゴニストであるCL316243に対する応答性が低下していることを確認した。本研究により内在性のグルカゴンが褐色脂肪組織の機能維持において重要な役割を果たしていることが初めて明らかとなった。グルカゴン補充による寒冷不耐性改善において、肝臓における線維芽細胞成長因子21(FGF21)の発現および血中FGF21濃度が上昇したことから、この過程にFGF21が関与する可能性があり、今後さらに解析を進める必要があると考えられた。
3: やや遅れている
褐色脂肪組織におけるグルカゴン作用の解析をさらに進めてきたが、動物飼育における感染事象の発生により実験に用いる予定であった個体群に対して治療薬剤を投与する必要が生じた。信頼度の高いデータを得るために、治療薬剤投与をうけていない個体が充分数整うまで、予定していた実験を延期したため、遅延を生じた。
グルカゴン投与はGCGKOにおいてはFGF21の発現を促進するが、対照群においてはその作用は明確でない。実際、グルカゴンによるFGF21の発現・産生制御については異なる実験室・実験方法により異なる結果が報告されている。FGF21の発現制御とその意義に関する解析と、ニコチンアミド代謝・サーチュインの役割の解析を今後も進める予定である。
褐色脂肪組織におけるグルカゴン作用の解析を進めてきたが、動物飼育における感染事象の発生により実験に用いる予定であった個体群に対して治療薬剤を投与する必要が生じた。信頼度の高いデータを得るために、治療薬剤投与をうけていない個体が充分数整うまで、予定していた実験を延期しする必要が生じた。
上記の理由により平成27年度も追加の動物実験を行う予定で、未使用額は動物飼育費用および試薬器具消耗品経費に充てる。また経費の一部を学会発表・打ち合わせ・情報収集のための旅費に充てる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件)
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