研究課題
グルカゴンの主要な作用は、肝臓におけるグリコーゲン分解と糖新生を促進することにより血中ブドウ糖濃度を上昇させることであるが、グルカゴンを欠損するグルカゴン遺伝子ノックアウトマウスの血糖値は対照群の血糖値と有意な差を認めない。これまでの検討から、グルカゴン遺伝子ノックアウトマウスはアミノ酸代謝異常により高アミノ酸血症を示し、また、ニコチンアミド代謝の異常も示すことを明らかとしてきた。このほかにこのマウスは寒冷不耐性を示すことを示唆する予備データが得られていた。平成26年度までにグルカゴン遺伝子ノックアウトマウスでは褐色脂肪細胞の機能が低下していること、そしてこの機能制御に線維芽細胞成長因子21(FGF21)が関与していることを示し、論文発表した。興味深いことに最近、FGF21は低タンパク状態に対して産生が促進されることが報告された。一方グルカゴンは高いアミノ酸濃度で分泌が促進され、血中のアミノ酸濃度を下げる方向に働く。一方、グルカゴンによりFGF21の分泌は促進されるため、グルカゴン-FGF21-アミノ酸代謝制御の関係複雑に絡み合っている。このグルカゴン-FGF21-アミノ酸代謝制御の相互作用を解明するために、グルカゴン投与実験におけるさまざまな遺伝子の発現レベル解析や、これら遺伝子の発現の日周変動の解析を平成27年度は行った。一方、依然として、これらの制御にニコチンアミド代謝がどのように関与しているかは明らかでないため、今後さらに、これらの制御ネットワークの鍵となる遺伝子を改変した新たな動物モデルの作成や入手を進めていく必要があると考えられる。グルカゴン-FGF21-アミノ酸代謝制御の相互作用、およびグルカゴン-サーチュイン-ニコチンアミド制御の相互作用の生理的意義の解明に向けた基盤が、本研究により形成された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
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