研究実績の概要 |
我々は1993年にヒト褐色細胞種組織より、アドレノメデュリンを強力な降圧作用を有する新規生理活性ペプチドとして発見した。その後の研究により、アドレノメデュリン血管拡張作用、利尿作用をもつペプチドであり、血中を循環するホルモンあるいは心血管組織における局所調節因子として、血圧や体液量の調節に関与する極めて重要な循環調節因子であることが明らかになり、最近では探索的臨床研究も実施している。我々はアドレノメデュリンの発見以降も、アドレノメデュリンの研究を推進すると同時に、さらなる新たな生理活性ペプチドの探索を粘り強くすすめている。本研究では次の3テーマで研究を推進した。 (1)副腎髄質由来のTGW細胞のcAMP増加作用を有するペプチドの検索: 副腎髄質由来の培養細胞のcAMP増加を指標にしたアッセイ法を用い、新規生理活性ペプチドの探索をすすめおり、20近くのペプチドを精製し、構造解析を行った。新たな分子型のペプチドの同定には至ったが、全てVIP,CGRP,アドレノメデュリンなどのcAMP増加作用を有した生理活性ペプチドのメチオニン酸化物などの修飾物であった。(2)C末端アミド構造を有したペプチドの系統的検索:褐色細胞腫には、高濃度のアミド化酵素が含まれていることから、C末のアミド化された未知の生理活性ペプチドが存在すると考えられるので、我々が独自に考案した方法でペプチドの系統的検索をすすめているが、新規のものは見つかっていない。(3)アンジオテンシン関連ペプチドの系統的:アンジオテンシンIIのN末に特異的なラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて、新たなアンジオテンシン関連ペプチドを単離し、平成23年度にBig angiotensin-25(Bang-25)を発見した。平成24年度はBang-25の測定系を確立し、健常人および腎疾患患者の尿中のBang-25濃度を検討し、診断薬としての可能性を明らかにした。
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